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放射能汚染に憤る大地 福島出身小泉さんの物語と共鳴 反核画家 黒田さんが絵本

 反戦反核の画家黒田征太郎さん(74)=北九州市=が、旧知で福島県出身の東京農大名誉教授、小泉武夫さん(69)の書いた物語を基にした絵本「土の話」(石風社)を出した。語る主は、福島第1原発事故で放射能に汚染された大地。人間社会への痛烈な憤りを描いた。

 土の語りは福島の阿武隈弁だ。太古から生命を育む大地が、人間の営みに違和感を覚え始める。田畑を耕すのは「それもいがっぺ」、家や学校を建てるのも「仕方あんめ」と受け入れるが、道路や工場、発電所建設とエスカレートする。しまいには原発事故で放射能を浴びせられ、人間は一目散に逃げていく。

 動けぬ土は微生物の力で放射性物質を分解していく。再び草花が茂り鳥もさえずる。そこへ何食わぬ顔で戻る人間。土はほえる。「こりねでまだ放射能なんていじりまわしたらよ、今度こそ何もかも終わりだもんない」

 実家の造り酒屋も被害を受けた小泉さん。醸造や発酵が専門で、豊かな食と土との関わりを説いてきた。20年来の友人の黒田さんから昨年秋に文執筆の依頼があり、快諾した。「もの言えぬ土の憤りは、福島県民の声。迫力ある絵が強力なメッセージになっている」と語る。

 思いを受け止めた黒田さん。方言の語りを大声に出しながら筆を握ると、「絵がスッと浮かんできた」。現地は除染さえなかなか進まない。それでも「子どもたちに少しでも光を見せたい」と明るい未来も描いた。

 黒田さんにとって東日本大震災後に出版した3冊目の絵本。原爆の愚かさや核利用を問う「火の話」、トランペッター近藤等則さんとの共著「水の話」に続く。「自分を含め、責任は全て大人にある」と言い、続編の構想を練る。「土の話」はA4判、32ページ、1365円。3作とも石風社Tel092(714)4838。(広田恭祥)

(2013年3月29日朝刊掲載)

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