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真宗学寮が未登録 広島市の被爆建物台帳 爆心地から2.5キロ 市が調査へ

 米国の原爆投下後に臨時の救護所となった真宗学寮(広島市西区)が、木造の寮舎と講堂を「被爆建物」として維持してきた一方、市の被爆建物台帳に登録されていないことが5日、分かった。国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(中区)が学寮に避難した被爆者の証言収録に伴う調査で把握した。市が1995年の被爆50年事業として被爆建物を掘り起こした際につかみ損ねた可能性がある。市は「調査したい」とする=26面に関連記事。(水川恭輔)

 学寮は浄土真宗を学べる私塾として06年に西向寺(現中区)に創設され、26年に現在の西区南観音の新築建物に移転した。爆心地から約2・5キロで寮舎と講堂が損壊したが、焼失は免れ、多くの負傷者が避難した。

 学寮によると、被爆した寮舎と講堂を57年までに修復。2006年に天井や床下を補強し、外壁を塗装した。学寮は、被爆時の造りをとどめているとして記念冊子などで「被爆建物」として紹介している。

 祈念館は、被爆して学寮に避難した村山季美枝さん(79)=東京都文京区=の証言を17年秋に収録し、関連の調査でこれらの経緯を確認した。

 市の現在の被爆建物台帳は被爆50年事業で刊行した「ヒロシマの被爆建造物は語る」(1996年)の関連調査がベースになっている。関係者によると、当時寺院を網羅的に調べたが、私塾だけに分類に捉え損ねた可能性があるという。

 市の被爆建物登録は現在85件で、近年は老朽化による取り壊しも相次ぐ。前回の新規登録は2015年の「本川公衆便所」(中区)。救護所にもなった地域の主要施設が新たに登録されれば異例となる。

被爆建物
 広島市が1993年に関連の要綱を定め、爆心地から5キロ以内で被爆し、現存している建物を被爆建物台帳に登録している。被爆の記憶の継承に生かしてもらおうと登録建物のリストをホームページで公開するほか、保存工事の費用を助成。国も2016年度、保存への補助を始めた。現在は国や県、市などの公共機関の所有が21件、民間64件の計85件。

(2019年8月6日朝刊掲載)

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