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社説・コラム

『この人』 「核兵器と安全保障を学ぶ広島―ICANアカデミー」コーディネーター 福岡奈織さん

 ノーベル平和賞を受けた非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))と広島県が、被爆地・広島で初めて開催しているアカデミーの企画運営に携わる。「核兵器廃絶と訴えるだけでは伝わらない。核被害のリアルを知ってもらうところから始まる」。そんな思いで、11カ国から参加した若者15人と向き合う。

 8泊9日の講座。初日の7月31日、平和記念公園(広島市中区)でのフィールドワークには被爆前の町並みの写真や地図を用意した。水を求める被爆者を描いた生々しい絵も示した。原爆が落とされる前に確かにあった人の営みを感じてもらうためだ。食い入るように見詰める参加者の表情に手応えを感じた。

 昨年末、ICAN国際運営委員の川崎哲(あきら)さん(50)から「広島の視点を注いでほしい」と声を掛けられ、引き受けた。広島市で生まれ育った被爆3世。40代で亡くなった母方の祖父があの日、広島にいた。

 小中学校での平和学習などで「被爆者の証言を聞ける最後の世代」との思いを強めた。広島大に進み、2014年に外務省のユース非核特使に。被爆者が各国で体験を伝えるNGOの航海に同行した。

 世界を巡り、打ちのめされた。米国が原爆投下の正当性を主張するように、国によって核被害の受け止め方は全く異なるからだ。

 同時に「広島の力」を再認識した。「核兵器が使われれば何が起きるか。人の感性に訴え掛ける力が広島にはある」。核の被害者の「リアル」をどうすれば多くの人の心に響かせることができるか。その手法を模索し続ける。安芸区在住。(宮野史康)

(2019年8月6日朝刊掲載)

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