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日韓学生ら祈り一つに 韓国人原爆慰霊祭 政府間の対立深刻化 20人で童謡合唱

 韓国人原爆犠牲者慰霊祭が5日、広島市中区の平和記念公園にある慰霊碑前で営まれた。日韓の政府間の対立が深刻化し、姉妹都市の交流事業などに影響が広がる中、両国の大学生たち約20人が韓国の童謡を歌い、犠牲者にささげた。(明知隼二)

 慰霊祭は、在日本大韓民国民団(民団)県地方本部が主催し、遺族や関係者たち約300人が参列。同本部の李英俊(イ・ヨンジュン)団長が、この一年に亡くなった14人を加えた2760人の死没者名簿を碑に納めた。「被爆により大変な人生を強いられた人たちの悔しさと悲しみを忘れない。朝鮮半島の核兵器をなくし、平和を定着させ、韓日友好親善に努力する」と述べた。

 この日は、日韓の大学の交流事業の一環で、高麗大(ソウル市)と早稲田大(東京)、広島経済大(安佐南区)の学生も参加し、花輪を手向けた。被爆死した犠牲者のために、ふるさとの風景や思い出を歌う韓国の代表的な童謡「故郷の春」を合唱した。

 高麗大2年の李政宰(イ・ジョンジェ)さん(19)は、両国の学生で犠牲者を悼んだことで「戦争という暴力に向き合う気持ちを、国境を越えて共有できた」と話した。学生たちは7日まで交流する計画で、歴史問題などをテーマにした討論会も予定する。早稲田大4年の大我寛樹さん(22)は「政府は対立しても、若者同士で顔を合わせてしっかり話をすれば、友人として共通理解を得られるはず」と力を込めた。

(2019年8月6日朝刊掲載)

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