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原爆で消えた家族の日常 埼玉の児童文学作家・指田さん アルバム風絵本刊行

 被爆前の愛情あふれる家族の写真を通し、原爆のむごさを伝える絵本「ヒロシマ 消えたかぞく」(写真・ポプラ社)を、児童文学作家指田和さん(51)=埼玉県鴻巣市=が刊行した。爆心地近くで散髪店を営み、被爆死した鈴木六郎さん(当時43歳)が撮りためていた写真の数々を、アルバム風に配した。鈴木さん一家6人は、全員が原爆の犠牲になった。

 一家の長女で、被爆当時9歳だった「公子」が語り手となり、笑顔いっぱいの家族の日常を切り取る。犬や猫を家族のようにかわいがる姿、父母や兄たちと出掛けたピクニック、弟や妹の誕生、勉強や遊び…。「いま、戦争してるっていうけど…… あしたは、なにを しようかな。ね、おにいちゃん?」。そして1945年8月6日、原爆が一家を襲う。

 兄と一緒にエビを捕っている写真には、父六郎さんの言葉が添えてある。「ぼくの子ども時代 そっくりだ ぼくの二世も始めた その次の三世も そっくりやるだろう」。その未来は絶たれてしまった。

 指田さんが2016年、原爆資料館(広島市中区)に展示されていた一家の写真を目にしたのが刊行のきっかけ。公子さんのいとこ、恒昭さん(87)=広島県府中町=からアルバムを借り、一枚一枚に向き合った。「戦争や原爆で命を落としたたくさんの家族があったことを忘れないでほしい」と願う。1782円。(増田咲子)

(2019年8月6日朝刊掲載)

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