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首相発言 前進なく 被爆者7団体と面会

 安倍晋三首相が出席する広島市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」が6日、中区のホテルであった。二つの広島県被団協など7団体の代表が核兵器禁止条約への署名・批准を迫ったのに対し、首相は重ねて否定的な見解を示した。

 安倍首相は「アプローチは異なるが、禁止条約が目指す目標はわが国も共有している」と強調した。ただ「核兵器保有国と非保有国の橋渡しに努め、双方の対話を粘り強く促す」と従来方針を説明。面会後の記者会見でも踏み込んだ発言をしなかった。

 面会に同席した根本匠厚生労働相は原爆症認定を巡り「できる限り救済する観点に立つ」とした。一方、被爆2、3世への支援拡充を求める声には「がんは放射線影響研究所の調査で、遺伝的影響から発症率が上がるとの科学的知見は得られていない」と答えた。

 締めくくりのあいさつで安倍首相は、広島市が平和記念公園(中区)で進める被爆遺構の発掘調査などを念頭に「次の世代に継承するための支援を強化する」と述べた。

 首相はまた、今回の出席を見合わせた県被団協の坪井直理事長(94)宛ての手紙を、この日出席した同被団協の箕牧智之理事長代行に手渡した。

 終了後、広島被爆者団体連絡会議の吉岡幸雄事務局長(90)は「禁止条約を批准しない政府は、被爆者の気持ちをどう理解しているのか」と憤った。韓国原爆被害者対策特別委員会の李鐘根(イ・ジョングン)委員長(89)は「世界中で原爆の恐ろしさを後世に伝えていくためにも、在外被爆者の健康支援の充実が欠かせない」と訴えた。(下久保聖司、村田拓也、久保友美恵)

(2019年8月7日朝刊掲載)

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