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核保有 認識の溝深く 平和記念式典 89ヵ国・EU参列 世界情勢が不安定化

 平和記念公園(広島市中区)で6日開かれた平和記念式典には、89カ国と欧州連合(EU)の代表が参列した。冷戦終結を後押しし核軍縮の潮流をつくった米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約は2日に失効。世界情勢が不安定さを増す中、各国大使たちの声からは核兵器保有を巡る認識の違いが浮き彫りとなった。(桑島美帆、加納亜弥、山川文音)

 核兵器保有国からは米国、ロシア、英国、フランス、パキスタンの5カ国が出席。事実上の核兵器保有国であるイスラエルも参列した。式典後に中国新聞の取材に応じたロシアのドミトリー・ビリチェフスキー臨時代理大使は「国際社会で核軍縮に取り組むべきだ。ロシアも最終的には核廃絶を目指したい」とした上で、INFについて「維持したかったが、米国の方から離脱した」と強調した。

 米国のジョセフ・M・ヤング臨時代理大使は取材に応じなかった。

 アンゴラのルイ・オルランド・シャビエル大使は「2大国の条約が失効したことで核保有のコントロールが難しくなる。核拡散も進む恐れがある」との懸念を隠さない。

 国連で2017年7月に採択された核兵器禁止条約は依然、発効に必要な批准国数の50カ国に届いていない。

 今年2月に批准した南アフリカのルラマ・スマッツ・ンゴニャマ大使は「全ての国が条約に関心を持つべきだ。特に被爆国である日本には主導権を持って行動してほしい」。一方、英国のポール・マデン大使は「条約は多国間交渉を重視しておらず、適切ではない。英国は支持しない」とし、来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議での議論を重視する構えを見せた。

 ヒロシマの発信力に期待する声もあった。日系2世のベネズエラのセイコウ・イシカワ大使は「痛みを乗り越えた被爆者のメッセージは重い。持続的な平和をつくるには市民レベルでの努力を続けることが重要だ」と力を込めた。

(2019年8月7日朝刊掲載)

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