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被爆地を観光 意識高まる 広島で「ピースツーリズム」シンポ

 平和をテーマにした観光周遊「ピースツーリズム」が被爆体験や戦争体験の継承に果たす役割を探る国際シンポジウム「HIROSHIMAとピースツーリズム」が広島市中区の広島国際会議場であった。広島大平和センターの主催。

 同センターのファン・デル・ドゥース・ルリ准教授は、平和記念公園や原爆資料館を訪れた観光客が口コミ旅行サイトに投稿した大量の感想文を分析し発表。「人と出会い、被爆地という場で『あの日』を感じることで、『私も伝えよう』という当事者の思いを持ち始めている」とした。

 4月に本館がリニューアルオープンした原爆資料館の志賀賢治前館長は、「ヒロシマの未来と資料館の役割~世界史的視座から」と題して発言。きのこ雲の下にいた人間の視点から、実物資料によって一人一人の被爆者の苦しみや悲しみを伝える展示に込めた意図を語った。

 海外の動向についても報告があった。韓国・ソウル大の鄭根埴(チョン・グンシク)教授は、南北軍事境界線を挟んで北朝鮮を臨む観光展望台などが、国民に安全保障意識を持たせるという冷戦期の目的から、平和や生態系保護のイメージを強めていった歴史的変遷を説明した。(金崎由美)

(2019年8月19日朝刊掲載)

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