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原発防災 足りぬ専門家 島根・鳥取県と6市 採用と育成に苦心

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)30キロ圏の島根、鳥取県と両県6市が、原子力防災を担う職員の採用と育成に苦心している。福島第1原発事故以来、避難計画作りなど業務量が増し住民広報のニーズも高まる一方、専門分野に詳しい学生や社会人のパイは限られる。人件費の手当など国の支援を望む声も上がっている。(樋口浩二)

 島根県は1日付で、原子力分野の専門技術職員の男性(27)を採用した。専門職を初めて採用した2010年に次ぎ2人目で、主に島根原発の安全対策のチェックを担当する。

 ただ09、11、12年の3回の採用試験(いずれも定員1人)で受験者は2~8人。近隣県に原子力分野の専攻を持つ大学がなく、待遇面でも原子力関連メーカーや電力会社に劣るため志望者が集まりにくいのが実情という。12年1月以降、専門職3人を採用した鳥取県も「想像以上に人が集まらない」(原子力安全対策課)という。

 島根県防災部の大国羊一部長は「縁が深い大学教授に当たるなど当面は地道なPRを続けたい」と話す。

 12年10月末、国の原子力災害対策重点区域の拡大で事故に備えるエリアに入った出雲、安来、雲南、米子、境港市の5市はさらに深刻だ。担当なしの状態から、急増する実務と並行して職員育成も迫られたからだ。

 福島の事故当時はゼロだった担当者を4人に増員した米子市。人件費は全額市が負担する。原発関連の交付金は人件費に使えない規定があり、市危機管理室の大塚亮室長は「国策で原発を進めるなら国が補助する仕組みを」と訴える。

 松江市は05年から全国の原発立地市町村で唯一、経済産業省原子力安全・保安院(現原子力規制庁)に職員1人を2年間ずつ派遣。同省から3年おきに部次長級の原子力専門監1人も招くなど、独自の人事交流で体制強化を図っている。

 ただ30キロ圏の他の5市で人事交流の例はない。5市は、中電に締結を求めている安全協定で、専門知識が欠かせない原発への立ち入り調査権を要望している。雲南市の斉藤雅孝統括危機管理監は「人事交流も視野に、職員のスキルアップを急ぎたい」と話している。

<島根原発周辺自治体の原子力防災体制>

自治体名    担当職員数        専門の技術職員
島根県      32人(+24人)      2人
松江市       8人(+ 3人)      1人
出雲市       6人(+ 6人)      不在
安来市       4人(+ 4人)      不在
雲南市       4人(+ 4人)      不在
鳥取県      27人(+26人)      3人
米子市       4人(+ 4人)      不在
境港市       4人(+ 4人)      不在

【注】担当職員数の島根、鳥取両県は兼務を含む。かっこ内は福島第1原発事故以前との比較

(2013年4月4日朝刊掲載)

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