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高感度カメラ 見学体験 原爆資料館 改装後照明抑えめ 暗い展示 見えやすく

 4月にリニューアルした原爆資料館(広島市中区)で24日、夜になると見えづらくなる夜盲症などの人たちが暗い場所でも見える眼鏡型の機器を使って展示を見学する体験会があった。照明を抑えた館内の演出に「暗くて展示が見えない」との声があり、市視覚障害者情報センター(同)が初めて企画した。(明知隼二、中川雅晴)

 眼鏡型の機器は、高感度カメラで撮影した明るい映像を目前の画面に映し出す仕組み。体験会にはお年寄りたち5人が参加した。機器を開発したメーカーの担当者に使い方を教わりながら、被爆死した学生の遺品や焼け野原になった広島市内の写真を見て回った。

 初めて資料館を訪れた浜田順子さん(60)=中区=は「普段は映画館のような薄暗い場所には行けない。この機器を着ければとても見やすい」と話していた。

 資料館本館は有識者による議論などを経て、遺品など「実物資料」を重視した展示にリニューアル。来館者に集中して資料に向き合ってもらうため、以前に比べ照明を抑えた。資料を後世に残すため傷みを最小限に抑える狙いもある。

 一方、センターにはリニューアル後、夜盲症の人たちから「資料館が暗くなり、説明文を読みづらい」といった声が寄せられた。このためメーカーの協力を得て資料館側に体験会の開催を申し出た。

 夜盲症の主な原因の一つである網膜色素変性症は、4千~8千人に1人が発症するとされる。センターは「夜盲症をはじめ、視野が狭まる病などを患った人たちは暗い場所での見学が難しい。全国から訪れる来館者の中にも困っている人がいる可能性がある」とし、同様の機器の配備を提案する。

 資料館学芸課の加藤秀一課長は「これまでも指摘を受けて通路や説明文の照明を明るくしたケースはある。すぐに機器を配備するのは難しいが、可能な対応をしたい」と話している。

(2019年8月25日朝刊掲載)

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