×

ニュース

ヨウ素剤 眠ったまま 島根原発30キロ圏の6市 配布基準なく戸惑い

 中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の事故に備え、島根、鳥取県は3月末、原発30キロ圏の両県6市に甲状腺被曝(ひばく)を予防する安定ヨウ素剤を計37万錠配備した。福島第1原発事故を受けた国の方針に従った対応だが、住民への配布、服用方法は未定。両県と6市は国に早急な説明を求めている。(樋口浩二)

 3月27日、本庁舎と3支所に19万8千錠のヨウ素剤が島根県から届いた出雲市。「どう配るのか分からないから物置にしまうしかない」。防災安全課の森山靖夫防災安全管理監はこぼす。

 分量だけをみれば、国が服用対象とする40歳未満5万600人の1日の服用量をカバーできる。だが、どう住民に行き渡らせ、放射線量がどの値となれば服用させるのか―。国は示していない。

 2月に事前配布が必要と決めた原発5キロ圏の予防防護措置区域(PAZ)についても、配布基準は白紙だ。6市で唯一、該当エリアを持つ松江市も「各世帯に配るのか、避難所に配るのか。国の基準待ち」(原子力安全対策課)と、庁舎の一室にとどめ置く。

 両県の事業費は、従来の原発10キロ圏から配布エリアを広げた島根県が安来、雲南市も含め120万円、初めて配備した鳥取県が米子、境港市分の80万円に上る。「服用方法が分かっても、事故の混乱時に住民へ説明が行き届くだろうか。マンパワー不足が不安」(鳥取県医療指導課)との懸念も聞かれる。

 島根県立中央病院の安井清中央診療部長(放射線科)は「ヨウ素剤は成長過程にある子どもに特に有効」と話す。「ただ副作用も一部の人にはある。適量を適時に服用できるよう国と県、市が協力し住民へ周知することが重要」と指摘している。

安定ヨウ素剤
 体内にあらかじめヨウ素を含ませることで、放射性ヨウ素の吸入を防ぐ医薬品。吸入の2時間前に服用すると約9割、2時間後で約8割被曝(ひばく)を抑えるとされる。錠剤と粉末状があり、国は1回当たり13歳以上は2錠、7~12歳は1錠、6歳以下は粉末を水に溶かして服用するよう定めている。

(2013年4月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ