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防衛省 過去最大5.3兆円 宇宙など新領域対処強化

 防衛省は30日、2020年度予算の概算要求を、過去最大の総額5兆3223億円とすると決めた。19年度当初予算比で1・2%増。昨年策定の防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」で宇宙など安全保障上の新領域での対処能力強化を掲げたことを踏まえ、実現への第一歩と位置付ける。海上自衛隊の護衛艦「いずも」を事実上空母化するための改修費31億円や、同艦で運用する米国製戦闘機F35Bの6機の取得費846億円を計上した。

 19年度に続き米軍再編関連経費などは金額を示さない「事項要求」としており、年末の予算編成へ向けて防衛費は膨らむ可能性が高い。第2次安倍政権発足以降、8年連続増となる見通しだ。過去に締結した契約に基づいて支払う「歳出化経費」は19年度当初予算比9・9%増の2兆1615億円。「ローン」返済が重くのしかかる構図は変わっていない。

 「新たな戦場」として米国や中国などが開発競争を繰り広げる宇宙空間での常時監視態勢を築くため、航空自衛隊に「宇宙作戦隊」を新設。宇宙空間に設ける新型の光学望遠鏡の整備に33億円を求めた。人工衛星への電波妨害の状況を監視する装置の取得などに40億円を盛り込んだ。

 また、宇宙ごみや不審な人工衛星が日本の人工衛星に衝突しないか監視するシステムの取得費154億円を計上した。このシステムは海自山陽受信所跡地(山陽小野田市)にレーダーを設置し、空自府中基地(東京都府中市)で23年度の運用開始を予定する。

 陸上自衛隊内には、電磁波を使って敵部隊の活動を妨害する「電子戦部隊」や、陸自のネットワークを防護する「サイバー防護隊」を設置する。

 いずも改修は、軍備増強を続ける中国をにらみ、南西諸島防衛などを想定している。21年度に終える予定。同じいずも型で、海自呉基地(呉市)を母港とする「かが」については、「今後の定期検査の時期が来れば、改修を考える」としている。F35Bは短距離で離陸し、垂直に着陸できるのが特徴だ。30年代に退役が見込まれる空自F2戦闘機の後継機の開発費は事項要求とした。国際協力を視野に、年末までに概要を固める。

(2019年8月31日朝刊掲載)

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