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源流 平和願う場 市民に定着 三良坂の「つどい」15回目

合併後も官民で継承 地域の一体感を重視

 毎年8月上旬に三次市三良坂町の三良坂平和公園である「平和のつどい」が、3日にあった今年の集会で15回目を迎えた。旧三良坂町の住民の活動を市町村合併後も官民一体で受け継ぎ、市全域から集まった人々が平和を考える機会として定着している。(石川昌義)

 三良坂平和公園のシンボルでもある「母と子―わたす像」の周囲に3日夜、約千個の灯籠が並んだ。灯籠の明かりで公園を彩る行事は合併前、歴代町長が会長を務めた「三良坂町平和を願う会」が続けていた。合併翌年の2005年以降は三次市が主催し、市職員や地元住民を中心とした実行委員会が運営する。

 旧町が1990年に整備した同公園は、三良坂平和美術館を建設するなどした旧町の平和行政を象徴する場所だ。旧町時代、諸外国による核実験への抗議の座り込みの中には、町長の姿もあった。

 合併協議の過程で、旧町が主導した平和行政の中断を懸念する声もあった。合併後の「平和のつどい」は、地域の一体感を重視している。13年以降、灯籠に描く絵を全市域から公募するコンテストを始めた。

 ことしは保育所や学校、職場から500点を超える応募があり、新元号「令和」をテーマにした作品が目立った。審査した三良坂平和美術館の元泉園子館長(61)は「これまでの作品もカープ、三江線といった地元の話題を反映している。平和な日常への感謝が伝わる」とみる。

 灯籠を飾る折り紙は12年から、原爆の子の像(広島市中区)に全国から寄せられた折り鶴を広島市から譲り受けている。家族5人で初めて参加した三次市南畑敷町のパート事務員堀江寿見子さん(42)は「息子が描いた灯籠を見に来た。平和を願う人が大勢いると実感した」と驚く。

 ことしの集いには、三次市の福岡誠志市長と小田伸次議長が参加した。あいさつに立った小田議長は、自身の亡父が広島で入市被爆した逸話を紹介。「父は核兵器のない世界を望んでいた。世界恒久平和を実現しよう」と来場者に語り掛けた。

 三次市は合併翌年の05年、市平和非核都市宣言を発表した。同年から続く「平和のつどい」では毎年、地元の中学生が宣言を朗読している。

 「明日も笑いあえるように 手をつないでいられるように 私たちは永遠の平和を望む」。ことしの会場で生徒たちの宣言を聞いた合併前最後の町長、湯免龍夫さん(82)はうなずいた。「戦争を知る世代は少なくなったが、世界から核兵器をなくすという私たちの願いは受け継がれている」

(2019年8月31日朝刊掲載)

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