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福屋 被爆時の外壁公開へ 八丁堀本店に常設コーナー 素焼きの破片5点

 百貨店の福屋(広島市中区)が被爆建物として知られる八丁堀本店で、創業90周年を迎える10月1日から被爆時の外壁の一部を初めて一般公開することが1日分かった。店内にコーナーを常設する。来年の被爆75年という節目を見据え、戦前から続く同社の歴史の発信に乗り出す。

 テラコッタ(素焼き)の破片5点。1972年に外壁を全面的に張り替えた際に削り取り、保管していた。90年に広島大の故葉佐井博巳名誉教授(核物理学)たちが原爆炸裂(さくれつ)時の放射線量を推定する研究のためくりぬいており、その部分に円形のプレートが張ってある。現在の建物の外壁に、被爆時のものは残っていない。

 開業時のにぎわいや、被爆直後の建物を捉えた写真も展示する。常設コーナーに加えて、電車通りに面した正面玄関の柱に「被爆建物 福屋百貨店」と書かれた銘板も掲示する。原爆の惨禍を乗り越え、復興のシンボルになったことを日本語と英語で紹介する。

 爆心地から710メートルに位置する同店は45年8月6日に内部を焼失。翌年2月に営業を再開し、増改築や耐震補強を重ねている。大下洋嗣社長(51)は「本店は福屋の財産というよりは広島の財産。この建物の歴史をしっかりと伝え、できる限り守り続けていく」と話した。(桑島美帆)

(2019年9月2日朝刊掲載)

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