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戦争博物館 苦悩・役割は 世界から専門家 広島でシンポ

 世界の博物館から専門家が集い、戦争犠牲者たちの追悼や記憶の継承を考えるシンポジウムが5日、広島市中区の原爆資料館であった。戦争被害の実態を伝える難しさや果たすべき役割など共通の課題について議論し、関係者や市民たち約230人が聴いた。

 米ニューヨークの米中枢同時テロの跡地で2014年に開館した「9・11記念博物館」副館長のクリフォード・チャニン氏が基調講演した。早い時期から市民が、事件を伝える施設を求めていたと説明。一方で、博物館の開館は「本来は遺族だけの私的な悲しみを、公にする面がある」とし、社会の要請と、傷を負った遺族の思いが必ずしも一致しない難しさを指摘した。

 スペインのゲルニカ平和資料館のイラッチェ・モモイティオ館長は、スペイン内戦中の1937年にあった無差別爆撃の経緯を解説した。爆撃に関わった当時のフランコ政権が後に隠蔽(いんぺい)を図ったとして「二度と起こさないためにも、事実を後世に伝えることが重要だ」と訴えた。

 米ワシントンのホロコースト博物館のジェーン・クリンガー保存チーフは、ユダヤ人への迫害や殺りく、収容所への移送などの様子を、命懸けで隠し撮りして後世に残したカメラマンたちを紹介した。「残された写真はただの歴史的記録ではなく、人間性の証しでもある」と述べた。

 1日から京都市で開かれている「国際博物館会議」(ICOM(アイコム))の関連行事。ICOMの専門委員会の一つで、戦争やテロ事件などの被害を伝える博物館でつくる「公共に対する犯罪犠牲者追悼のための記念博物館国際委員会」(ICMEMO(アイシーメモ))が主催した。(明知隼二)

(2019年9月6日朝刊掲載)

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