千羽鶴を折る子どもたち ハンガリーからの手紙 サダコの思い 私たちも
09年3月30日
■記者 下山克彦
東欧・ハンガリーの小学校でこの春、ヒロシマを、そして「サダコ」を思いながら、子どもたちが千羽鶴を折っている。鶴は、「友情を千の鶴のつばさとともに」と題し30日に始まる校内イベントで展示される。折り鶴を指導する吉澤幸代さん(38)=東京都出身=から届いた便りから、共感と相互理解の取り組みを紹介する。
《●吉澤さんの便り》鶴を折っているのは主に7歳から10歳までの低学年。原爆の子の像建立のきっかけとなった佐々木禎子さんの話と日本民話の「鶴の恩返し」を授業で学んでのことです。いつも、その日に出来上がった鶴を、笑顔で数え上げます。高学年は、俳句作りなど、日本文化を学んでいます。
舞台は同国東北部、人口約12万人のニィーレギハーザ市にあるニィーレギハーザ大付属アパーツァイ小学校(850人)。新学期が始まった2月から、学校を挙げて日本文化の理解に取り組み、同大の日本語講師である吉澤さんがサポートする。もともと親日的なお国柄に加え、高性能な日本製品や評価が高いアニメ作品などから、あこがれは強い。日本語を学ぼうとする子どもたちも増え続けている、という。
《●吉澤さんの便り》なぜ、私たち日本人が折り鶴を折るのか、どんな歴史、願いや意味があるのかを伝えたい。そして鶴の折り方に留(とど)まらず、国や文化、言語は違っても等しく分かり合え共感できることを教えたい。ハンガリー人の教諭と協力し、総合的な平和学習のきっかけにしたいのです。
サダコの物語を教え、イベントを発案したマーリア先生は「私自身、ヒロシマは歴史上の悲劇の一つだった。それがサダコを知り、同じ12歳の娘を持つ母として、深く心ひかれた。だから教え子に伝えたかったし、どんな歴史の授業よりも大きな成果があったと実感しています」と話してくれました。
便りに先立ち、吉澤さんは30人以上の子どもたちに、鶴を折った感想を聞いてくれていた。「サダコはギブアップしなかった。私たちも平和をあきらめちゃだめ」(7歳女児)、「原爆を落とすなんてあんまりだ。ずっとサダコのことを思いながら心を込めて折っている」(9歳男児)、そして「サダコは、希望が必要な人の代表。そして千の鶴は、ひとりぼっちじゃないってことの象徴です」(14歳、女子生徒)…。同世代ならではの共感と、平和を願う気持ちがあふれる。
《●吉澤さんの便り》30日から4月2日までのイベントの名は友達になろうという意味の造語の「ともだちzunk」。折り鶴だけでなく、俳句コンテストや日本の風景の上映会を開いたりします。低学年向けには、はしの練習や平仮名の紹介もあります。日本への関心の高さに応えるものにしたいと、意気込んでいます。
「この千の鶴は特別な希望だから…」「自分が参加できたことを誇りに思う」-。子どもたちのさまざまな思いがこもった折り鶴はイベント後、原爆資料館(広島市中区)に送られる予定だ。
(2009年3月29日朝刊掲載)
東欧・ハンガリーの小学校でこの春、ヒロシマを、そして「サダコ」を思いながら、子どもたちが千羽鶴を折っている。鶴は、「友情を千の鶴のつばさとともに」と題し30日に始まる校内イベントで展示される。折り鶴を指導する吉澤幸代さん(38)=東京都出身=から届いた便りから、共感と相互理解の取り組みを紹介する。
「平和 あきらめちゃだめ」
《●吉澤さんの便り》鶴を折っているのは主に7歳から10歳までの低学年。原爆の子の像建立のきっかけとなった佐々木禎子さんの話と日本民話の「鶴の恩返し」を授業で学んでのことです。いつも、その日に出来上がった鶴を、笑顔で数え上げます。高学年は、俳句作りなど、日本文化を学んでいます。
舞台は同国東北部、人口約12万人のニィーレギハーザ市にあるニィーレギハーザ大付属アパーツァイ小学校(850人)。新学期が始まった2月から、学校を挙げて日本文化の理解に取り組み、同大の日本語講師である吉澤さんがサポートする。もともと親日的なお国柄に加え、高性能な日本製品や評価が高いアニメ作品などから、あこがれは強い。日本語を学ぼうとする子どもたちも増え続けている、という。
《●吉澤さんの便り》なぜ、私たち日本人が折り鶴を折るのか、どんな歴史、願いや意味があるのかを伝えたい。そして鶴の折り方に留(とど)まらず、国や文化、言語は違っても等しく分かり合え共感できることを教えたい。ハンガリー人の教諭と協力し、総合的な平和学習のきっかけにしたいのです。
サダコの物語を教え、イベントを発案したマーリア先生は「私自身、ヒロシマは歴史上の悲劇の一つだった。それがサダコを知り、同じ12歳の娘を持つ母として、深く心ひかれた。だから教え子に伝えたかったし、どんな歴史の授業よりも大きな成果があったと実感しています」と話してくれました。
便りに先立ち、吉澤さんは30人以上の子どもたちに、鶴を折った感想を聞いてくれていた。「サダコはギブアップしなかった。私たちも平和をあきらめちゃだめ」(7歳女児)、「原爆を落とすなんてあんまりだ。ずっとサダコのことを思いながら心を込めて折っている」(9歳男児)、そして「サダコは、希望が必要な人の代表。そして千の鶴は、ひとりぼっちじゃないってことの象徴です」(14歳、女子生徒)…。同世代ならではの共感と、平和を願う気持ちがあふれる。
《●吉澤さんの便り》30日から4月2日までのイベントの名は友達になろうという意味の造語の「ともだちzunk」。折り鶴だけでなく、俳句コンテストや日本の風景の上映会を開いたりします。低学年向けには、はしの練習や平仮名の紹介もあります。日本への関心の高さに応えるものにしたいと、意気込んでいます。
「この千の鶴は特別な希望だから…」「自分が参加できたことを誇りに思う」-。子どもたちのさまざまな思いがこもった折り鶴はイベント後、原爆資料館(広島市中区)に送られる予定だ。
(2009年3月29日朝刊掲載)