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非核 世界が考える機に 法王訪問 広島の被爆者ら期待

 ローマ法王庁(バチカン)が法王フランシスコの被爆地訪問を正式発表した13日、広島から歓迎の声が上がった。核超大国である米国、ロシアは今、核兵器の近代化を競うよう進め、核軍縮は停滞している。核兵器のない世界への転機となってほしい―。核兵器廃絶を繰り返し訴えてきた法王が被爆地から発信するメッセージに、被爆者や若者たちは期待を高めた。(田中美千子、明知隼二)

 「発表を心待ちにしていた」。広島県被団協の箕牧(みまき)智之理事長代行(77)は声を弾ませた。「法王のお言葉なら世界の政治家も聞いてくれる。各国が核軍縮へかじを切る契機になってほしい」

 そう強く願う背景には、核兵器禁止条約を巡り、保有国と非保有国の対立が深まっていることへの懸念がある。「核兵器廃絶に逆風が吹き荒れている。法王の発信力は最後の期待と言ってもいい」と力を込めた。

 バチカンは同条約の署名、批准をいち早く済ませた。もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)の大越和郎事務局長(79)は「法王にはスピーチで条約の意義に触れてもらいたい。日本を含め、条約に背を向ける国に大きなインパクトを与えるはずだ」と強調した。

 法王の訪日は1981年2月の故ヨハネ・パウロ2世以来、38年ぶり。「被爆者の肉声を聞いていただくのは本当にうれしい」。核兵器廃絶の署名活動を進める高校生平和大使で、6月にバチカンで法王の一般謁見(えっけん)に参列した広島大付属高2年松田小春さん(16)=広島市南区=は喜ぶ。世界12億人以上とされる信者の存在も念頭に「多くの外国人が広島を訪れ、被爆の実態に触れるきっかけになれば」と願う。

 「ご高齢であり、厳しい日程の中、広島訪問はないかもしれないと思っていた」。法王の受け入れ準備を進めてきたカトリック広島司教区のトップ、白浜満司教(57)は中区の同司教区で取材に応じ、笑顔を見せた。「世界平和と核廃絶を願う広島の人たちを後押しする訪問となってほしい」

(2019年9月14日朝刊掲載)

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