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基町高生 聞き取り重ね描く 8歳の物語「子ども励ます内容」

あの日の体験 紙芝居や絵本で 広島

 基町高(広島市中区)創造表現コースの2年生たちが、小倉桂子さん(82)=中区=の被爆体験を聞き取りながら紙芝居と絵本を制作している。小さな子どもの心に届けようと、絵はいずれも柔らかい筆致。小倉さんは、今後の証言活動で活用していくつもりだ。

 紙芝居の題名は「ケイコの8月6日」。牛田町(現東区)の自宅前で爆風に飛ばされたことや、大やけどの人に水をあげると目の前で息を引き取ったことなど、8歳の少女の体験を27枚の水彩画で表現する。

 「暗いイメージだけでなく、世界の紛争地や被災地の子どもを励ます内容に」という小倉さんの思いもくみとり、焼け野原で路面電車が運行再開する様子と、広島東洋カープの存在に勇気を得て市民が復興に向かう場面で締めくくる。

 横山栞央(りお)さん(16)が全体構成と文章を担当。前浜穂乃香さん(17)がイラストを描いた。昨年10月から小倉さんと打ち合わせを重ね、当時の感情や覚えている光景、戦時中の暮らしについて聞いた。小倉さんが被爆した場所も訪ねた。横山さんは「子どもが戦争を体験すること自体、最初は実感できなかった。つらい記憶を世界中の人に伝えている小倉さんの思いを表現したい」と意気込む。

 絵本は2冊。岡崎未雨さん(17)と平井麻縁(まゆか)さん(17)による「命の水」は、負傷者に水をあげたことを長年悔やみ、友人に打ち明けて初めて救われたことなどをつづる。「ボクのわすれられない夏」は白水咲さん(17)と水中蘭さん(16)が、親元を離れ学童疎開した小倉さんの兄の体験を描く。

 同校は原爆資料館の依頼を受け2007年から、被爆者の証言を聞いて油絵に描く「原爆の絵」に取り組んでいる。1枚の絵では表現しきれない被爆者の思いを次世代につなげようと、初めて紙芝居と絵本作りを企画した。小倉さんは「生徒の感性と熱心さに感銘を受けた。震災や紛争についても、このような取り組みが各地で広がってほしい」と話す。(桑島美帆)

(2019年9月16日朝刊掲載)

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