×

社説・コラム

天風録 『頑張れ国連』

 きのうは「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」だった。国連が6年前に定めたことも含め、一体どれだけの人がご存じだろう。恥ずかしながら小欄で話題にするのも今回が初めて▲忘れてもらっては困ると、当の国連の危機感は相当に強いらしい。核戦争さえも起こりかねない国際情勢を懸念し、グテレス事務総長は今週、こう演説した。「これまで以上に分裂した世界で、強い国連が必要だ」と▲その思いをあえて無視したに違いない。同じ総会の席上、トランプ米大統領がたんかを切った。「未来は国際主義者のものではなく、愛国者のものだ」。まるで一国主義を貫くから国連など要らぬと言わんばかり▲では安倍晋三首相の国連演説は―。アフリカ開発会議などを主宰してきた自らの経験を紹介しながら「私は多国間の枠組みにその役割があることを再々証明してきた」。盟友トランプ氏の意向とは微妙に異なり、国際協調の重要性を語ったのである▲国連は来年、創設75周年を迎える。つまり曲折こそさまざまあれど、1世紀の4分の3にわたり世界大戦はなかったということ。引き続き国際連盟を教訓に各国間の結束を固め、核兵器廃絶にいっそうの尽力を。

(2019年9月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ