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未完の「はだしのゲン」魂託す 中沢さんの遺稿、原爆資料館へ寄贈

 昨年12月に73歳で亡くなった広島市中区出身の漫画家中沢啓治さんの代表作「はだしのゲン」で、未完となった第2部の新たな遺稿16ページ分を11日、妻ミサヨさん(70)が中区の原爆資料館に寄贈した。

 遺稿は埼玉県所沢市の自宅でミサヨさんが遺品整理中に見つけた。中沢さんが執筆を断念した第2部は、原爆投下後の広島で成長した主人公のゲンが絵の修業で上京した後を描く構想だった。第1話の最初の16ページ分は2011年に中沢さん自身が資料館に贈っており、今回はその続編の17~32ページ。

 B4判の紙4枚の表裏に、絵やせりふの下書きが鉛筆で描かれている。東京に着いたゲンが空襲で孤児となった少年と出会い、「わかるよ、わしも広島のピカで同じ思いをしたけえのう…」と身の上話を聞くうちに少年にお金を奪われてしまう場面だ。

 ミサヨさんは「作品を通して、原爆や戦争に反対する気持ちが広まれば」と話した。志賀賢治館長は、今夏に予定する企画展で公開する考えを示した。ミサヨさんは、中沢さんの自伝「『はだしのゲン』自伝」の挿絵の原画も一緒に寄贈した。(田中美千子)

(2013年4月11日夕刊掲載)

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