×

ニュース

紙芝居で平和の種まき 国連NGO表彰 福山市立大の大庭准教授

 「被爆アオギリ」の紙芝居を使った読み聞かせ活動を続ける福山市立大(港町)教育学部の大庭三枝准教授(54)が、幼児教育に関する国際的な賞に輝いた。紙芝居は外国語にも翻訳され、取り組みは海外にも広がる。「平和の願いをより一層世界に広げたい」と、受賞を励みに意気込む。

 紙芝居は同大の前身、市立女子短大講師だった大庭さんのゼミ生が2006年度に制作した。原爆で引き裂かれたアオギリから新芽が出て、2世の木々が世界に平和のメッセージを届けるという物語だ。

 大庭さんは紙芝居の読み聞かせをし、その後に参加者と一緒に平和が「芽吹き」、大きく花開くのを体で表現。最後に平和のシンボルとして折り鶴を作る幼児教育プログラムを実践している。「平和をつくるのは自分たち」という気持ちを育む狙いで、学部の実習として学生が保育所などで取り組んでいる。

 賞は環境や平和、人権などの問題解決につながる学び「持続可能な開発のための教育」(ESD)を推進する非政府組織(NGO)の世界幼児教育保育機構の「ESDアワード」。同機構は約70カ国・地域が加盟する国連NGOで、今回の受賞は日本人初となる。

 大庭さんは、フランスで教諭をしていた1995年に原爆投下50年のイベントに参加。「日本の若者は平和のためにどう行動しているのか」と問い掛けられ、「何も答えられなかった」。その思いを持って故郷福山に戻った。

 「100年先まで残る教材を作る」と、紙芝居の制作を指導した。アオギリ2世の植樹などを手掛けた被爆者の彦坂昭子さん(92)=福山市多治米町=たちに聞き取って完成させた。市内の図書館や市人権平和資料館などに贈り、フランス語版、英語版も作った。同大と交流協定を結ぶフランスの大学には毎年、学生が赴き実践する。ある年、紙芝居を聞いた6歳の子が「核のボタンを押さないように大統領に手紙を書こう」と言ったと聞き、「世界中の子どもに通じる平和教育だ」と自信を持てたという。

 制作から13年。国際情勢は厳しさを増していると感じる。ただ、7月にパナマであった表彰式では参加者から「私の国でもしたい」との励みになる声を受けた。教え子も全国で読み聞かせに励む。大庭さんは「子どもに平和な世界を残すのは大人の使命。受賞をきっかけに、紙芝居をもっと遠くへ届けたい」と力を込める。(吉原健太郎)

(2019年9月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ