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法王へ銅板折り鶴 市立広島工高生がプレゼント制作中

平和願い聖堂屋根材加工

 広島市立広島工業高(南区)の生徒が、11月に広島を訪れるローマ法王フランシスコに贈るため、原爆犠牲者を悼む世界平和記念聖堂(中区)の屋根材だった銅板で折り鶴を作っている。法王の受け入れ準備を進めるカトリック広島司教区(同)が依頼した。被爆地の聖堂に込められた慰霊と世界平和の願いを、新たな形に変えて届ける。

 折り鶴は幅15センチ、高さ8センチほどで、歳月を経てくすんだ銅の風合いを生かす。材料は1954年に聖堂を建設した当時から使われていたもの。耐震工事に合わせた屋根のふき替えに伴って提供された。

 機械科3年の有志7人が、銅板を金づちでたたいたり、万力で曲げたりして加工する。「いつも使っている銅板とは桁違いの硬さです」と中尾恒太さん(18)=南区。広島工業高は広島を訪れる海外のゲストへの贈り物などとして年間400~500羽作る。いつもの銅板は厚さ0・1ミリほどで、慣れた生徒は十数分で仕上げるが、今回は厚さ0・35ミリと約3倍。完成まで4日ほどかかる。

 広島司教区が法王への折り鶴にまつわるプレゼントを考えていた際、同高が2005年から続ける銅板折り鶴の活動に着目した。支援する広島ユネスコ協会の小川順子理事(75)を通じて8月に依頼。原田豊己司祭(65)は「聖堂は世界平和を祈って建てられ、教皇(法王)ヨハネ・パウロ2世が訪れた場所でもある。広島の高校生が心を込めて作った折り鶴は、意義深い贈り物になる」と感謝した。

 生徒たちは授業中だけでなく休憩時間にも制作を続ける。班長の佐藤匠さん(18)=安芸区=は「時間がかかる分、気持ちも詰まっている。工業高生としての技術を生かし、広島と世界の平和をつなぐ折り鶴にしたい」と話している。

 法王は11月24日、広島と長崎を訪れる予定となっている。(明知隼二)

世界平和記念聖堂
 広島市の幟町カトリック教会で被爆したフーゴ・ラサール神父が、原爆犠牲者を悼み世界平和を祈る場として発案。ローマ法王ピオ12世の賛同を得て、寄付を募りながら世界を回り、建設にこぎ着けた。パイプオルガンや鐘などの備品も世界各国から寄せられた。日本を代表する近代建築家、村野藤吾の設計。1954年、幟町カトリック教会の敷地内に完成した。2006年には国の重要文化財に指定された。

(2019年9月30日朝刊掲載)

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