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西中国山地空域訓練 米、自衛隊に事前通告 2年で453日 休日も

 西中国山地の訓練空域「エリア567」で米軍が訓練する際、自衛隊に実施予定を伝える事前調整の状況が12日、防衛省の資料で初めて分かった。米軍は、ことし2月までの約2年間に少なくとも計453日間、計約2582時間の実施を通告していた。日米合意で必要不可欠な場合に限るとしている「週末や休日」も多数含まれていた。(城戸収)

 防衛省はこれまで事前調整の詳細を明らかにしていなかった。垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの本土訓練などで、関係自治体や住民から情報公開を求める声が高まっていることなどが公表の背景にあるとみられる。

 事前調整の内容は、共産党の井上哲士参院議員(比例代表)の資料請求に答えた。回答したのは2011年1月~13年2月までの訓練予定日。開示を求めた訓練機の所属先は「在日米軍から同意を得られない」として明らかにしていない。

 期間中、日数が最も多かった月は11年9月と12年11月の28日間。最少は11年2月の5日間。12年8月以降は、毎月21日以上と、恒常的に実施を通告している。

 1999年の日米合同委員会では、週末や休日の訓練は「必要不可欠な場合に限る」と合意。しかし、調整実績には週末や休日も多く含まれる。例えば、ことし2月は計9日の土日祝日のうち、7日間の訓練を予定していた。ただ、米軍が予定日に実際に訓練したかどうかは、日本側は全てを把握していないとみられる。

 エリア567は航空自衛隊防府北基地(防府市)などの訓練空域を含む。日本政府は過去の国会答弁で、米軍が自衛隊の訓練空域を飛行する際、各基地と事前調整する取り決めがあると認めている。

 事前調整について、防衛省は「事故防止が目的で、自衛隊は(米軍の訓練を)認めるかどうかの立場にない」と説明する。

 広島県北部の住民たちでつくる「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」(活動休止中)の事務局次長の岡本幸信さん(48)は「想像以上の訓練状況で驚いている。事前に訓練日が分かるなら地元に通知できるはず。日本政府は住民の不安に向き合おうとしていない」と話している。

エリア567
 廿日市市北部、島根県邑南町、萩市沖の上空を各頂点とする三角形の空域。広島県では廿日市市、北広島、安芸太田両町、島根県では浜田、益田、江津の3市と川本、邑南両町、山口県では岩国市北部などが域内に入るとみられる。

米軍訓練空域事前通告 「政府 なぜ情報伝えぬ」 自治体や市民 驚き・怒り

 広島、山口、島根の3県にまたがる米軍訓練空域「エリア567」での訓練をめぐり、防衛省と米軍が詳細な事前調整をしていたことが12日、明らかになった。エリア内の自治体や市民団体に驚きが広がり、詳細な情報を得ながら地元に伝えてこなかった政府に非難の声が相次いだ。

 米軍機の低空飛行が後を絶たず、政府に訓練予定や空域を明らかにするよう求めてきた島根県。防災危機管理課は「要望し続けても出てこなかった情報がこれほど詳細に明らかになるとは」と驚きを隠さなかった。

 昨年度の上半期、米軍機とみられる低空飛行の目撃件数が1012件と過去最多だった広島県国際課は「訓練の情報が事前に入ったことはない。防衛省に事実確認をしたい」。米海兵隊岩国基地を抱える岩国市基地政策課も「情報の存在を知らなかった。防衛省は岩国や飛行エリアの自治体と情報を共有すべきだ」と求めた。

 廿日市市の市民団体「岩国基地の拡張・強化に反対する県西部住民の会」の坂本千尋事務局長は「いつ、どこを飛ぶか分からないから不安が大きくなる。国民の安心安全を守る立場の国が情報を得ながら何も知らせないのはおかしい」と憤る。

 岩国基地には、日米両政府が7月、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを新たに搬入する方向で調整中だ。基地監視団体リムピース共同代表の田村順玄岩国市議は「住民の頭上でこれほど危ない訓練が行われていることは許せない。同様のペースでオスプレイの訓練も計画されるのではないか」と懸念。「政府は事前に協議したことを住民に明らかにするべきだ」と強調した。

(2013年4月13日朝刊掲載)

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