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ナチスに奪われた曲 発掘・継承 独在住デュオ 全国初公演 25日の福山ホロコースト記念館から

 ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)に代表されるナチスの弾圧でユダヤ人作曲家の作品演奏は禁止され、忘れられた。ドイツで作品の発掘、演奏に取り組むピアニストのクリスト加藤尚子さん(43)たちが25日、福山市御幸町のホロコースト記念館で日本公演をスタートさせる。ドイツから遠く離れた日本で、ホロコーストの記憶継承を続ける同館を知り、開催を決めた。広島市中区でも27日公演する。

 クリスト加藤さんとソプラノ歌手アナ・ガンさん(46)の「ゲルンスハイム・デュオ」。クリスト加藤さんは2016年、ホロコーストを扱うラジオ番組に関わってきたガンさんと共演。埋もれた作品の素晴らしさに感動し、作品の発掘、演奏活動に加わった。

 デュオ名は、再評価の機運が高まるドイツの作曲家でピアニスト、指揮者のフリードリッヒ・ゲルンスハイム(1839~1916年)にちなむ。ゲルンスハイムの歌曲の世界初録音や、ホロコースト追悼の催しでの演奏などで精力的に活動している。

 初の国外公演先としてクリスト加藤さんの母国、日本の会場を考える中で同館の存在を知った。東京、神戸、神奈川を含む全7公演の1番手として打診した。

 公演ではゲルンスハイムに加え、同様に演奏が禁じられ、埋もれた作曲家の作品を計約20曲演奏する。「ホロコーストがなければ世界で広く親しまれていたはずの素晴らしい音楽を、多くの人に届けたい」とクリスト加藤さん。同館の大塚信館長は「ナチスによって奪われた豊かな文化に思いをはせる機会にしてほしい」と話す。

 25日のホロコースト記念館公演は午後7時から。定員100人、無料。電話やメールで申し込む。同館☎084(955)8001。27日の広島市中区のルーテル広島教会公演は午後3時からで無料。(吉原健太郎)

(2019年10月11日朝刊掲載)

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