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被爆樹木 記憶つなぐ 埼玉の写真家・浅見さん 「75年」に向けて創作開始

 カメラを使わない「フォトグラム」と呼ばれる技法で、広島の被爆樹木のアート作品を手掛ける写真家の浅見俊哉さん(36)=埼玉県三郷市=が、被爆75年の来年へ向け、新たな創作活動を始めた。布に被爆樹木の葉や枝の影を写し取り、それを身にまとってもらうなどして75年前と「今」の記憶をつなぐ試みだ。

 原爆を乗り越えて生き続ける樹木のエネルギーに感動した浅見さんはここ数年、毎年原爆の日の前後に広島市を訪れて被爆樹木のフォトグラムを制作してきた。感光紙や感光液を塗った布の上に被写体を置き、15分間ほど光を当てて陰影を出す。いずれも、樹木の影が青く浮かび上がり幻想的な雰囲気が漂う。

 これまで仕上げた作品は約500点。題材の多くは、爆心地から370メートルの本川沿いにあるシダレヤナギだ。今年も数日間広島に滞在し、若い枝葉の影を布に転写した。展示にとどまらず、この布で衣服を作って音楽家やダンサーにパフォーマンスをしてもらうことも構想中だ。

 「原爆は、被爆者や関係者だけが考えるものではない。作品を通じ、幅広い世代が被爆樹木に関心を寄せるきっかけをつくりたい」と浅見さん。今夏は広島市内で巡回展が実現し、はつかいち美術ギャラリー(廿日市市)で開かれた被爆樹木の企画展にも出品した。今後は、「ハワイのホノルルやロシアのボルゴグラードなど、広島市の姉妹都市でも展示したい」と意気込む。(桑島美帆)

(2019年10月14日朝刊掲載)

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