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廃炉 再稼働 中ぶらりん 島根原発1号機 結論3年先送り?

 3月末で運転開始から39年を迎えた中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)の1号機について、運転開始42年を超える2016年7月まで廃炉、再稼働ともに決まらない可能性が浮上してきた。「原発の40年廃炉」を原則とする原子力規制委員会が、運転延長に必要な「特別点検」の結果を15年4~7月に報告するよう求めたからだ。(樋口浩二)

 審査には「約1年かかる」(規制委事務局の原子力規制庁)との見方がある。地元からは「福島第1原発事故の教訓から生まれた『40年廃炉』の原則が骨抜きになる」との批判が上がっている。

 規制庁によると、電力会社が自主的に廃炉を決断しない限り、審査を断ることはない。このため、中電が「廃炉の考えはない」(苅田知英社長)との方針を維持する限り、この先約3年は廃炉にならないことになる。

 また規制委は、全原発を対象とする規制基準の施行日(ことし7月)の時点で運転37年を超える原発について、運転期限を施行日から3年間猶予することも12年9月に決めている。

 特別点検は今月3日、規制委が40年超えの運転を目指す電力会社に課すことを決めた。原子炉圧力容器全体に傷やひび割れがないかを超音波で調べる検査だ。

 しかし1号機では、規制委が福島第1と同じ沸騰水型原発で稼働条件とした「フィルター付きベント設備」は未着手。「安全対策の費用は膨大になる」(県関係者)との声もあり、中電が費用対効果から廃炉の判断を迫られる可能性は残る。

 島根県の溝口善兵衛知事は規制基準に対し「国が詳細に説明してからの判断」と見守る構え。松江市の松浦正敬市長も同様の姿勢で、立地自治体から廃炉を望む声が上がる気配は今のところない。

 一方、約6割の松江市民が1号機の廃炉を希望しているとの調査もある。無作為抽出した有権者2千人を対象に、島根大法文学部の上園昌武教授が12年11月にまとめた(回答1296人)。

 上園教授は「福島の事故原因が分からない以上、国の審査に信頼性はない」と主張。「福島第1と同型で老朽化も進んでいる1号機は、特に廃炉にするべきだ」と訴えている。

≪島根原発1号機をめぐる今後の動き≫

2013年4月      原子力規制委が新規制基準案公表
     7月       新規制基準の施行
  14年3月      運転開始から40年
  15年4月~7月  特別点検の提出時期
  16年7月      運転猶予の期限

島根原発1号機
 国産第1号の原発として1974年3月29日に運転を始めた。沸騰水型の軽水炉で出力46万キロワット。総工費は約393億円。原子炉機器の点検不備問題を受け、2010年3月31日に運転を停止。そのまま同年11月、定期検査入りし、停止期間は3年を超えた。

(2013年4月14日朝刊掲載)

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