×

ニュース

安全策「確実に着手を」 被服支廠6案 広島県報告に議会委

 広島県は18日、広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で2020年度に着手する安全対策の方向性を、県議会総務委員会に報告した。県が持つ3棟について、耐震化、外観保存、解体の方向性を位置付けた6案。県議からは方針を絞り込んだ上で確実に着手するよう求める意見が出た。

 県財産管理課の足立太輝課長が6案の概要を説明。「建物の価値や県財政への影響を考慮して、早急に対応を整理する」とした。井原修氏(自民党広志会・つばさ、東広島市)は「来年度に着手できるようしっかり検討してほしい」と念押しした。

 6案で概算費用が最も安いのは、3棟全てを解体する4億5千万円。最も高いのは3棟全てを耐震化する84億円となる。爆心地に最も近い1号棟の全てか一部を保存する他の4案は、6億~31億円とした。

 県は建物の持つ価値や今後の活用策について、有識者や不動産鑑定士に聞き取った主な意見も紹介した。被爆の実態を伝える価値や建築学的に貴重と評する声があった一方、集客施設などに改修しても収益で耐震化の費用を賄うのは困難との意見があったとした。(樋口浩二)

旧陸軍被服支廠(ししょう)
 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。爆心地の南東2・7キロにあり、1913年に完成した。13棟あった倉庫のうち4棟がL字形に残り、県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。4棟は鉄筋コンクリート・れんが造りの3階建てで、1~3号棟はいずれも延べ5578平方メートル、4号棟は延べ4985平方メートル。戦後、広島大の学生寮や県立広島工業高の校舎、日本通運の倉庫などとして利用されたが、95年以降は使われていない。

(2019年10月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ