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原爆ドーム 3度目不調 保存工事入札 市、条件見直し視野

 広島市が世界遺産の原爆ドーム(中区)の保存工事で実施した入札が5日、3度目の不調に終わった。過去4回あった全ての保存工事を担った大手ゼネコン清水建設(東京)が応札したが、予定価格を上回った。市は入札の条件見直しも視野に入れ、被爆75年となる来年8月6日の平和記念式典までの完了を引き続き目指して準備を進める。

 入札の内容は、鋼材の塗り替えや壁のれんが目地の補修、窓部分の柱の補修などで、工期は来年6月末までの8カ月。史跡や重要文化財などの補修実績がある16業者が対象で、うち清水建設が1日に応札したが、予定価格を上回った。予定価格を上回った場合、1回に限り再度の金額提示ができるが、同社が5日に辞退した。

 保存工事を巡っては、市はことし2月と6月に入札をした。建設業界の全国的な人手不足などに加え、ドーム補修の独特の難しさもあり、2回とも対象業者の全てが辞退した。さらに、ドーム補修のノウハウを持つ清水建設が、リニア中央新幹線に関わる談合事件で9月下旬まで市から指名停止を受けており、入札に参加していなかった。

 今回は清水建設が参加して応札もしたが、結果は不調に終わった。市公園整備課は「価格や工期など不調の要因を分析し、必要に応じて条件を見直す」と説明。次の入札は「現段階で時期は未定だができるだけ早くしたい。来夏の平和記念式典には支障がないように進めたい」とした。

 市は保存工事のため、18年度当初予算に工事費5800万円を計上。当初は19年10月の完了を予定していたが、2度の入札不調で予定が遅れ、19年度の補正予算では工期変更に伴う増額分を盛り込んでいた。(明知隼二)

原爆ドームの保存
 原爆ドームは1915年に広島県物産陳列館として完成し、33年に県産業奨励館に改称。45年に被爆し、96年に世界遺産登録された。市は67年、内部から壁を支える鉄骨の設置、補強のための樹脂注入など初の保存工事を実施。89、2002、15年と工事を重ねた。工法は専門家による保存技術指導委員会で検討。5回目の工事は、鋼材のさびを化学処理して塗装する工法などについて、18年9月の委員会で合意している。

(2019年11月6日朝刊掲載)

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