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被爆樹木 水彩で記録 広島の藤登さん 「たくましさ描く」 

 広島市安芸区のアマチュア画家、藤登弘郎さん(77)は爆心地から約2キロ圏内にある被爆樹木を巡って水彩画を描き続けている。「原爆で傷ついても、たくましく生きる姿を描き残し、命や平和の大切さを伝えたい」と2年後の被爆70年に作品展開催を計画している。

 熱線で焼かれて大きな穴ができた天満小(西区)のプラタナス、原爆による火災の盾となって延焼を防いだ安楽寺(東区)の大イチョウ…。1月から市内50カ所以上を全て歩いた。幹に手を当てて息遣いも感じた。

 80本分を仕上げる予定で、半分は描き上げた。水彩の柔らかいタッチで原爆による傷痕をはっきりと描き、木が持つ生命力を表現している。

 広島銀行を退職した後、水彩画を始めて約20年。取り壊しで失われつつある「被爆の証人」の姿をとどめようと、これまでに広島と長崎の被爆建物も描いてきた。被爆樹木の水彩画は画集にまとめて自費出版し、被爆70年には、被爆建物の絵と合わせて作品展を開くつもりだ。

 呉市安浦町出身で被爆はしていないが、2番目の兄は、広島市内の学校に通っていて被爆。悲惨な様子をよく話してくれたという。

 藤登さんは「枯れてしまった被爆樹木もあり、絵という形で後世に残したい。戦争体験のない子どもたちに、絵を通して平和について考えるきっかけにしてもらえれば」と願っている。(増田咲子)

(2013年4月16日朝刊掲載)

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