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撃沈艦から生還 父の記憶たどる 大津島で回天追悼式 米の歴史家男性初参列

「若者 語り継いで」

 旧日本軍の特攻兵器「回天」の訓練基地があった周南市大津島で10日、搭乗員をしのぶ追悼式があった。回天の攻撃で沈んだ米艦の乗組員だった父の記憶をたどろうと初来日した米国人の歴史家の男性も参列し、犠牲者に思いをはせた。(山本真帆)

 給油艦ミシシネワの元乗組員の息子で歴史家のマイケル・メアさん(65)=ウィスコンシン州=は、海に飛び込み生き延びた父から「記憶を後世に伝えてほしい」と託されたという。式典で遺族と交流したメアさんは「長年訪れたかった場所。それぞれの犠牲者に思いをはせた」と話した。

 メアさんは2014年に米国で出版された日米双方の視点で回天を記録した書籍「KAITEN」の執筆者の一人。メアさんは式典で参列者に向かい「若い世代こそが回天の歴史を学び、語り継いでいくべきだ」と呼び掛けた。

 慰霊碑前であった式には遺族たち約350人が参列。うち千葉県浦安市の稲場昭子さん(92)は病気で不自由な足をかばいながら26年ぶりに島の土を踏んだ。「自分で立てる最後になるかも」と娘2人との参列を決めた。兄の創一さんは20歳で戦死。稲場さんは「勉強も運動もできる自慢の兄。二度と同じ時代は来てほしくない」と娘たちに希望のバトンを託す。

 回天顕彰会の原田茂会長は島内に犠牲者を弔う神社が完成したことに触れ「平和文化の発信地として新たなスタートを切りたい」と決意を新たにした。

(2019年11月12日朝刊掲載)

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