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[法王 被爆地へ] 英訳を添えて爆心地の画集 市民団体 壊滅した街並み描写

人々の暮らし伝えたい

 ローマ法王フランシスコの訪問を前に、市民団体「ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会」が、原爆で壊滅した広島の街並みを克明に描いた鉛筆画集「消えた町 記憶をたどり」の英訳を進めている。平和記念公園(中区)がある場所にも、街や人々の何げない暮らしがあったと世界の人たちに伝えたいという。公園を訪れる法王に届ける方法を探っている。(明知隼二)

 画集はA4判88ページ。現在の中区大手町で育ち、家族5人を失った被爆者の森冨茂雄さん(90)=西区=が、記憶を基に描いた作品43枚を収める。県産業奨励館(現原爆ドーム)を含む爆心地周辺の街並みを、商店の一軒一軒まで細密に描写。説明文は、元安川で泳いで遊んだ思い出など、子ども時代の暮らしを伝える。実行委が2011年に刊行し、18年に復刊した。

 英訳は今夏、同委員会の中川幹朗代表(61)が発案した。海外から平和記念公園を訪れる観光客は増えたが、破壊された人々の営みや生活は、まだまだ知られていないと感じていた。

 翻訳は、広島大平和センターのファン・デル・ドゥース・瑠璃准教授が担った。元住民への聞き取りや現地調査を重ね、仕事の合間に約3カ月かけて進めてきた。「子どもたちの日常が生き生きと描かれている」。校正で協力してくれた米国人は、原爆が人間の上に落とされた事実を初めて実感したと話したという。

 製本などを含めた完成の時期は未定だが、24日に公園を訪れてメッセージを発する法王に、現行の画集に英訳を添えて届けたいと思っている。中川代表は「発信力のある法王だからこそ、自身が立つ公園にかつて、どんな暮らしがあったのかを知ってほしい」と願っている。

(2019年11月16日朝刊掲載)

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