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年限明記しない見通し 「核廃絶 20年までの達成不可能」 平和首長会議 次期ビジョンで

 平和首長会議(会長・松井一実広島市長)が、2020年までの核兵器廃絶を掲げた行動指針「2020ビジョン」に関連し、来夏に策定する次期ビジョンでは核廃絶の目標年限を示さない見通しとなった。核軍縮を巡る国際情勢が厳しさを増す中、核兵器保有国での加盟都市の拡大や、平和構築を担う次世代の育成などに力を入れる。

 同会議は11、12日、ドイツ・ハノーバー市で理事会を開き、ビジョンの達成状況や、次期ビジョンの骨子案などを協議した。理事会に出席した松井市長が21日の会見で報告した。

 松井市長は「全ての核兵器の解体」などの目標は「20年までの達成は不可能と見込まれる」と説明。さらに、廃絶に向けた世論喚起などの活動についても「核保有国と非保有国の大きなギャップを埋めるほどの広がりを持てていない」との厳しい認識を示し、今後は保有国での加盟都市の拡大に力を入れるとした。

 次期ビジョンの骨子案は新たに「平和文化の振興」を活動の柱に加え、若い世代の平和教育などを通じて、廃絶への環境づくりをさらに進めるとした。来年8月に広島市で開く総会で決める。松井市長は「ビジョンは核兵器のない世界というあるべき姿を示すものとの位置付けだ。具体的な活動を定める行動計画では、年限を区切り、進展を検証しながら取り組んでいく」とした。

 同会議には今月1日時点で世界163カ国・地域の7847都市が加盟している。(明知隼二)

【解説】会議の役割再構築を

 核兵器保有国がかたくなに核軍縮に背を向ける現実を前に、都市は何ができるのか―。平和首長会議の次期ビジョンに、核兵器廃絶の目標年限を盛り込まないとの判断には、都市の連合体である同会議の悩みがにじんでいる。

 現行の2020ビジョンは、秋葉忠利前市長時代の2003年、改称前の平和市長会議としてまとめた。「被爆者が健在のうちに」との願いを基調に、核兵器廃絶の目標を20年までと明示。「意欲的な内容」(副会長の田上富久・長崎市長)で、高齢の被爆者や支援者が国際的な署名や証言といった活動に力を奮い起こす源にもなってきた。

 しかし今、米ロ間の中距離核戦力(INF)廃棄条約の失効をはじめ、核軍縮は国家間の駆け引きの中で後退した。松井市長は今月上旬の会見で「都市の首長の力で直ちに世の中を変えられる状況にない」と吐露。核廃絶への道筋が見えない中、当面は廃絶への世論づくりに注力する考えを示した。

 核兵器禁止条約が国連で採択されたように、核兵器の非人道性を訴え、正面から廃絶を迫る重要性は変わっていない。被爆者が高齢になり、発信はますます難しくなっている。被爆地が率いる首長会議は何をすべきか。役割を再構築できるのかが次期ビジョンで問われる。(明知隼二)

(2019年11月22日朝刊掲載)

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