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平和願う筆文字 絵本に 広テレ開局50年企画から誕生

 広島テレビが開局50年記念で募った筆文字から生まれた書体「ピースフォント」を使い、冒険物語の絵本「紙の王国のキララ」(主婦と生活社)を作った。筆圧や勢いの異なる個性豊かな活字は、不思議なぬくもりと一体感がある。言葉を紡ぎ、気持ちを伝えるコミュニケーションの大切さを再確認できる一冊だ。

 舞台は、海と山に囲まれた広島をイメージした架空の町。元気いっぱいの女の子キララが、謎の組織「意味管理局」の言葉狩りに立ち向かい、壊れそうになった世界を救う冒険ファンタジー。報道機関らしく、言葉を紡ぐ責任感や、表現の自由を守る決意もにじむ。

 劇場アニメ「スチームボーイ」を手掛けた脚本家村井さだゆきさん(48)が広島を取材し、執筆。イラストレーターはぎわらゆいさん(27)が躍動感あふれる絵を描いた。

 創作に用いた「ピースフォント」は約3千字。同社は2012年1月に始めた「平和へのひと筆」プロジェクトで筆文字を募った。視聴者、広島ゆかりのアーティストやスポーツ選手、東日本大震災の被災者ら約1万6千人から、平和の願いを込めた「笑」「愛」「心」「友」などの字が寄せられ、これを基に新たな書体を完成させた。

 賛同者が筆文字を書いた台紙や絵本の扉には、平和記念公園(広島市中区)に寄せられた折り鶴を原料にした再生紙を使っている。冒険物語の中でも、折り鶴は重要な役割を果たしている。

 プロジェクト事務局の倉田泰行東京支社営業部長(42)は「平和を愛し、身近な人を大切に思う気持ちを、絵本を通じて多くの人と分かち合いたい」と話す。B5判、96ページ、1890円。全国の書店で販売する。フォントは同社ホームページで無料ダウンロードできる。(渡辺敬子)

(2013年4月18日朝刊掲載)

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