×

ニュース

核禁条約触れず落胆 被爆者

 安倍晋三首相は25日に官邸であったローマ教皇との会談と集いで、核兵器のない世界の実現が「私の揺るぎない信念」と強調しながらも、核兵器禁止条約には言及しなかった。日本被団協の木戸季市事務局長(79)は中国新聞の取材に「条約に踏み込んでほしかった」と述べ、落胆した。

 首相と教皇の会談は、5年ぶり2回目となる。「バチカンは核なき世界の実現などを重視するパートナーだ。協力をさらに拡大したい」。首相が冒頭でこう語った後、報道陣に非公開となった。

 会談後、閣僚や関係者が参加した集いに移った。安倍首相は核廃絶に向け「これからも核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努めてやみません」と訴えた。教皇は「広島と長崎に投下された原爆によってもたらされた破壊が、二度と繰り返されないよう阻止するために必要なあらゆる仲介を推し進めてください」と語った。

 首相と教皇の会談で核兵器禁止条約に触れられなかったことについて、木戸事務局長は「厳しいことを言い合わないようにお互いが配慮したのかもしれない」と推測。前日の24日に長崎で教皇の演説を聴き「核廃絶への真剣さを感じた」とし、安倍首相に「核兵器禁止条約について真剣に考えてほしい。橋渡しに努めるなら、被爆者の願いを核保有国にしっかり伝える役割を果たすべきだ」と求めた。(河野揚)

(2019年11月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ