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被服支廠2・3号棟解体へ 広島県が原案 1号棟 外観保存

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)について、広島県は2日、所有する3棟のうち1号棟の外観を保存し、2、3号棟を解体する原案を固めた。概算費用は8億円を見込んでおり、2020年度の着手を目指して20年度当初予算の編成を進める。「物言わぬ被爆者」の価値を重んじる市民の反発は必至で、原案に対する反応を探りながら方向性を確定させる。

 県は9月、建物が老朽化して地震で倒壊する危険性があるとして、安全対策をすると表明。10月には3棟のそれぞれについて、耐震化、外観保存、解体の方向性を示す6パターンを公表していた。関係者によると県は爆心地に最も近い1号棟を保存し、2、3号棟を解体・撤去する案を採用し、近く公表する。

 県の原案によると、外観を保存する1号棟は西側の外壁を補強し、震度6強の地震でも近くの民家などに被害が出ないようにする。屋根なども改修・補修し、21年度の完了を目指す。並行して建物の利活用の在り方を、国や市とともに探る考え。耐震化して内部を活用する可能性も残す。

 2、3号棟の解体は、20年度に設計し、22年度末までに終えると見込む。解体に先立ち、仮想現実(VR)の最新技術を用いて、1号棟を含む3棟の現在の姿をデジタル保存する。

 3棟は建築から106年がたつ。県は昨年12月、いったんは敷地内に被爆証言を聞く建物(平屋約130平方メートル)を新設するのを柱とした改修案をまとめた。しかし、県議会最大会派の自民議連から将来の財政負担の重さを懸念する声が出たため、方針を転換。安全対策の検討を進めていた。

 残る1棟は国が保有し、中国財務局(中区)が管理する。関係者によると、国も解体を含めて検討しているという。(樋口浩二)

旧陸軍被服支廠(ししょう)
 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。1913年の完成で、爆心地の南東2・7キロにある。13棟あった倉庫のうち4棟がL字形に残り、県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。4棟は鉄筋コンクリート・れんが造りの3階建てで、1~3号棟はいずれも延べ5578平方メートル、4号棟は延べ4985平方メートル。戦後、広島大の学生寮や県立広島工業高の校舎、日本通運の倉庫などとして利用されたが、95年以降は使われていない。

(2019年12月3日朝刊掲載)

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