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被服支廠活用 2月方向性 広島県、県議会に安全策原案提示

 広島県は4日、広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で所有する3棟のうち、1号棟の外観を保存し、2、3号棟を解体するとする安全対策の原案を、県議会総務委員会に示した。いずれも2020年度に着手し、保存は21年度、解体は22年度の完了を目指す。並行して1号棟と跡地の活用策を、国や市と連携して探るとした。(村田拓也)

 県財産管理課の足立太輝課長が、爆心地に最も近い1号棟を保存し、2、3号棟を解体・撤去するとした原案を説明。「今はこれが県の方針だ。安全対策が喫緊の課題となる中、被服支廠の価値を認めつつ、適切な規模で保存し、積極的に活用していく」と理解を求めた。最終的な方向性は20年2月に定めるとした。

 審議では、広島市への無償譲渡の実現可能性や、中国財務局(中区)が持つ4号棟の扱いを尋ねる声も出た。中国新聞の取材に、広島市は「市として具体的な活用案がない中、譲渡を受けることはできない」、財務局は「解体・撤去も一つの選択肢に、具体的な方法を検討する」と答えた。

 原案によると1号棟は西側の外壁を補強し、震度6強の地震でも近くの民家などに被害が出ないようにする。屋根なども改修・補修する。2棟の解体は、作業場所の確保が難しく、建物が崩壊しないよう慎重な作業が求められるとして、2年程度かかると展望した。

 保存した1号棟と、解体した2棟の跡地をどう活用するかは、国や広島市とも連携して検討を進めるとした。1号棟では建物の内部を活用するための耐震化の余地を残す。その場合、跡地を駐車場とし、見学者を受け入れる環境を整えるのも選択肢としている。

 県は9月、建物が老朽化して地震で倒壊する危険性があるとして、安全対策を施すと表明。10月には3棟のそれぞれで耐震化、外観保存、解体の方向性を組み合わせた6パターンを公表していた。今回の原案はこの6案の一つとなる。

旧陸軍被服支廠(ししょう)
 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。1913年の完成で、爆心地の南東2・7キロにある。13棟あった倉庫のうち4棟がL字形に残り、県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。4棟は鉄筋コンクリート・れんが造りの3階建てで、1~3号棟はいずれも延べ5578平方メートル、4号棟は延べ4985平方メートル。

(2019年12月5日朝刊掲載)

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