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「心に残る ドームの姿」 被爆後の空旋回 米退役軍人が講演

■記者 桑島美帆

 米退役軍人のアル・ゼルバー氏(88)=モンタナ州=が26日夕、広島市中区の原爆資料館東館で講演した。被爆約2カ月後の広島を上空から見た時の心境を率直に打ち明ける一方、米国で被爆者の証言に触れたのを機に核兵器廃絶への思いを強めたと話した。

 「あの時に見た原爆ドームの姿が強く心に残った」。ゼルバー氏は米陸軍の日本語担当情報部員として1945年10月ごろ、上海から東京へ空路移動。途中、広島市上空を2度旋回した。

 「原爆を落とした広島を見たいというパイロットの興味本位だったのだろう。われわれは原爆投下で戦争が終わり、幸福感でいっぱいだった」とゼルバー氏。だが広島を通り過ぎ東京へ到着するまで、機中はだれもが無言になったという。

 広島で何があったのかを知りたくて昨年9月、モンタナ州で広島市が主催した原爆展の会場を訪問。米在住の被爆者笹森恵子(しげこ)さん(76)が淡々と語る被爆体験を聞いた。

 「強く心を打たれた。政治の意思さえあれば、核兵器は廃絶できる」。原爆展を機に初の被爆地訪問を決意したというゼルバー氏は「あらゆる国の政治や軍の指導者は広島を訪れ、原爆資料館を見学すべきだ」と強く訴えた。

(2009年3月27日夕刊掲載)

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