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改憲論議 熱帯びる 参院山口補選 賛否交錯 住民戸惑いも

 第2次安倍政権発足後初の国政選挙となった参院山口補選(28日投開票)で、安倍晋三首相が唱える憲法改正論に対し、4候補の賛否が交錯している。世論調査では改憲を望む意見が多数を占める中、夏の参院選に向けボルテージが上がる改憲論に戸惑いの声もある。(藤田龍治)

 「なぜ今、改憲を急ぐのか」。山口市の憲法を活(い)かす市民の会・やまぐちの前田恵子さん(50)は反発する。憲法記念日に市内で行う9条アンケートを、ことしは防府市でも実施すると決めた。例年、回答は「9条を守る」が「変える」の2倍以上。前田さんは「現憲法で何が困るかなど、有権者間で議論や理解が進んでいない」と指摘する。

 自民党は昨年末の衆院選で、憲法を改正し自衛隊を国防軍と位置付けることなどを掲げ大勝。安倍首相は96条で定める改憲発議要件の緩和を明言し、夏の参院選に向け憲法改正を争点と位置づける。

 参院山口補選で、自民党公認の江島潔氏は「日本人自らの手で自主憲法を制定し、将来はこうあるべきだと示すことは若者が夢を持てる将来につながる」と改憲論を展開する。

 これに対し、無所属の平岡秀夫氏は「安倍首相の狙いは(戦力不保持を定めた)9条の改正で、庶民が望まない軍事大国への道を切り開く危険性がある」と警鐘を鳴らす。

 共産党公認の藤井直子氏は「子を戦争で失いたくないというのが全ての母親の願い」と改憲に反対の立場。幸福実現党公認の河井美和子氏は「現行憲法では国防に限界があり9条の改正が急務だ」と改憲に賛成を唱える。

 中国新聞社が加盟する日本世論調査会が夏の参院選に向け3月末に実施した全国面接世論調査では、憲法改正に賛成する議員が衆参両院でそれぞれ3分の2以上を占め改憲発議が可能になるよう望む回答が65%に達した。そうした世論動向に反核平和団体などの危機感は募るばかり。山口県原爆被爆者支援センターゆだ苑(山口市)の岩本晋理事長は「日本は戦争という過ちを体験し平和憲法を手にした。9条以上のものはなく改悪にしかならない」と強調する。

 各党が夏の参院選の前哨戦と位置付ける山口補選で、4候補の訴えがどれほど支持を得るか。結果次第では、今後の改憲論議に大きな影響を与えそうだ。

参院補選立候補者(届け出順、敬称略)

江島潔     56 前下関市長   自新(公推)
藤井直子   60 党県委員     共新
河井美和子  50 幸福実現党員  諸新
平岡秀夫   59 元法相      無新(民、ミ推)

 ▽党派の略称 民=民主党、自=自民党、公=公明党、共=共産党、ミ=みどりの風、諸=諸派、無=無所属

(2013年4月24日朝刊掲載)

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