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原医研に新実験施設 「低線量」研究 進展目指す 広島大霞キャンパス 20年末完成

 広島大は19日、同大原爆放射線医科学研究所(原医研)の新たな実験研究施設を、原医研がある広島市南区の霞キャンパスに建設すると発表した。全国的にも珍しい実験設備や原子力災害トレーニングセンターを整備。国内外の研究者を受け入れ、放射線災害や医科学分野の研究拠点として強化する。

 新施設は鉄筋6階建て延べ約4千平方メートル。原医研の隣接地で2020年1月に着工し、12月末の完成を目指す。総事業費は17億6千万円。原医研は現在、キャンパス内の離れた場所にある実験施設を使っているが、1960年代から建て増しを重ねるなど手狭で、老朽化も深刻になっていた。

 新たに備える放射線の実験室はマウスなどの動物用と細胞用の二つあり、各部屋に幅広い線量を長期間、照射し続けられる装置を配備。照射距離をずらしながら極めて低い線量の影響も調べられる。未解明の部分が多い低線量被曝(ひばく)を巡る研究の進展を目指す。

 原医研の田代聡所長は「同様の設備は国内には他に例がない。低線量被曝の影響について国内外の研究者との共同研究も進めたい」と話す。

 広島大は、原子力規制委員会から「高度被ばく医療支援センター」と「原子力災害医療・総合支援センター」に指定されている。新施設に備える原子力災害トレーニングセンターでは、学内外の医療関係者たちが内部被曝線量の測定や除染の訓練をする。同大にはこれまで、訓練のための専用施設はなかった。

 新施設にはこのほか、蓄積している原爆関連資料を保管するスペースや閲覧用の部屋なども備える。(田中美千子)

(2019年12月20日朝刊掲載)

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