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島根原発3号機提訴 高まる不安 原告動かす 全国から参加 大幅増

 建設中の中国電力島根原子力発電所3号機(松江市鹿島町)をめぐって24日、松江地裁に提訴された住民訴訟は、福島第1原発事故を踏まえた「原発への不安」が住民を動かした。事故以来、原発の稼働に反対する訴訟は全国で13カ所目。今回の「3号機訴訟」には全国から原告が参加し、14年前に始まった1、2号機の訴訟に比べ民意は大きなうねりとなった。(樋口浩二、松島岳人)

 「放射能を気にする生活はつらい」。2011年7月、福島の事故を機に東京から子ども3人と大田市に自主避難した歌手梶谷美由紀さん(41)。「原発はもう動かしてほしくない」とことし4月、原告団入りを決めた。

 梶谷さんのような避難者に加え、全国から原告が集まった点が今回の訴訟の特徴だ。

 呼び掛けたのは1999年に島根1、2号機の運転差し止め訴訟を起こした松江市民。だが、原告140人がほぼ中国地方の住民だった99年の同訴訟一審と比べ、今回の原告団は20都道府県の428人に増加した。うち3分の2が初めて原告に加わった住民という。

 ただ、これまでの原発訴訟で住民側が勝訴したのは2例だけ。高速増殖炉原型炉もんじゅの設置許可を取り消した名古屋高裁金沢支部判決(03年)と、北陸電力志賀原発2号機の運転を差し止めた金沢地裁判決(06年)。上級審ではともに住民側が敗訴した。

 福島の事故後も、関西電力大飯原発3、4号機の運転停止を求めた仮処分の決定で大阪地裁が4月、住民の申し立てを却下した。

 「福島の事故の後も、司法は原告に原発の危険性の立証を求めている」。立証は事業者と国の責任とする主張がかなわない現実を3号機訴訟弁護団の妻波俊一郎共同代表は指摘する。

 3号機の稼働は、国が稼働条件として7月に示す新たな規制基準が鍵を握る。ただ追加の対策が課されない限り、中電は14年度に稼働条件を整える見通しだ。松江市の松浦正敬市長が22日「3号機は稼働するべきだ」と明言するなど、立地自治体の首長にも稼働に前向きな声が出始めた。

 この日の提訴を受け、松江市の主婦矢川泉さん(34)は「3号機が稼働すると数十年は止まらない。2歳になる長女の成長過程で常にリスクを抱えることになる」と話した。

(2013年4月25日朝刊掲載)

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