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ヒロシマ復興 県・市で検証 体系化狙いリポート 来年3月完成

 被爆地広島の復興のプロセスを検証するリポートづくりを、広島県と広島市が共同で進めている。復興過程での課題や市民の平和意識との関連などを踏まえて調査し、体系的にまとめる作業には、都市計画や経済、医療などの専門家が参加。完成は来年3月を予定する。(野崎建一郎)

 県、市が依頼した学識者12人の共同執筆で、広島市立大広島平和研究所の水本和実副所長が取りまとめ役を担う。広島の特性を掘り下げつつ、広く平和構築分野の人材育成の資料として活用されることを目指す。

 国内初の住民投票を経て成立した広島平和記念都市建設法に基づく都市づくりのほか、産業や公共交通の再建▽保健・医療の充実と被爆者支援▽平和行政、平和教育―などについて、主に原爆投下前から昭和50年代までの歩みを紹介する。

 県が2011年に打ち出した国際平和拠点ひろしま構想の一環。同年11月の湯崎英彦知事と松井一実市長の会談を踏まえ、県と市の共同実施が決まった。

 昨年8月に編集委員会が設置され、現在は執筆者がそれぞれ調査や原稿執筆を進める。客観的なデータや写真をできるだけ多く盛り込む方針で、来年3月までにA4判、100ページ前後にまとめる予定だ。

 販売するかどうかは今後、検討する。外交官や政府機関職員の研修機関である国連訓練調査研究所(ユニタール)、紛争地や被災地の復興支援に取り組む国際協力機構(JICA)などに送る。

 広島市には、紛争や災害に見舞われた国内外の地域から政府関係者たちが復興の歩みを学びに訪れる。「焦土と化しながら、ビルが立ち並ぶ国際平和文化都市として復興できた理由を知りたい」との要望が寄せられるが、体系的に説明できる資料がなかったという。

 水本副所長は「現在の広島を形づくった道のりをたどり、復興の姿を浮かび上がらせるとの趣旨に賛同して参加した。他地域に広島の経験を参考にしてもらえる資料にしたい」と話している。

国際平和拠点ひろしま構想
 国内外の識者の提言を踏まえ、広島県が2011年にまとめた。被爆地の役割として、核兵器廃絶への貢献や、平和構築分野の人材育成、研究の集積を掲げる。具体策として、被爆地復興の研究や多国間で核軍縮を話し合う円卓会議の開催、各国の核廃絶の取り組みを採点した「ひろしまレポート」の作成などを挙げている。

(2013年4月26日朝刊掲載)

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