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核軍縮へ一歩前進  削減幅と検証焦点

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 江種則貴

 米国、ロシアの両大統領が会談後に発表した共同声明は、年内に失効する第一次戦略兵器削減条約(START1)に代わる新条約について、今年7月までに合意すると明言した。2つの核超大国が、冷却した関係を修復する最優先課題に核軍縮を位置付けたことを積極的に評価すべきだろう。

 両国は、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大や、米国のミサイル防衛(MD)東欧配備計画をめぐって対立。新条約の短期間での合意は困難視されていただけに、スピード感に満ちた目標設定は、世界的な核軍縮を加速させる意味でも好ましいと言える。

 米ロ両国が現在保有している戦略核弾頭は4000-6000発とされ、START1が削減義務とした「6000発」をすでに達成した。このため新条約は「1000発」程度への削減を盛り込むか否かが焦点の1つとされる。さらに、START1が定める厳格な相互査察・検証体制をどう継承発展できるかが、確実な核削減を担保する意味でも重要なポイントとなる。

 新条約交渉は、「核兵器のない世界を目指す」と説いてきたオバマ米大統領にとって実行力をアピールする格好の舞台。一方、ミサイルなどの運搬手段や通常兵器で劣勢のロシアにとっては、米国との戦力バランスを保つ好機となる。

 とはいえ、たとえ1000発程度に削減するにせよ、廃絶には遠い。世界は今、テロリストが核兵器を入手する悪夢にうなされている。フランス政府は核実験被害者への補償を決めた。人類は、核開発の代償に正面から向き合うことを余儀なくされている。

 それを痛感しているはずの核超大国だからこそ、米ロは新条約をめぐり、警戒態勢の解除や先制不使用、新型核の開発凍結などにも踏み込んで交渉するよう期待したい。それが核兵器は「使えない兵器」だとの再認識につながり、来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け、核軍縮から廃絶への潮流をより太くするからだ。

(2009年4月2日朝刊掲載)

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