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広島市の財政支援 期待 湯崎知事「一緒に保存へ努力を」

 被爆建物「旧陸軍被服支廠」(広島市南区)の保存・活用策を巡り、所有する広島県と市の主張が分かれている問題で、湯崎英彦知事は24日の記者会見で、保存に向けた市の財政支援に期待感を示した。「踏み込んだ財政負担を検討し、一緒に保存へ努力してほしい」と述べた。

 県は所有する3棟のうち1号棟の外観を保存し、2、3号棟を解体する安全対策の原案を公表。17日から1カ月間、県民意見を募っている。これに対し、松井一実市長は18日の記者会見で、3棟全ての保存を求める意見を県に伝えたと明らかにした。

 湯崎知事は24日の会見で、松井市長の発言について「原案をまとめる過程で、できれば3棟全棟を保存してほしいという市の意見は聞いていた。それをあらためて発言したと受け止めている」と語った。

 その上で、市の被爆建物の登録制度と、民間所有者に限定した保存工事の補助制度に言及。「既存の制度だけでは、なかなか保存が難しい現実もある。より積極的な対策も検討してほしい」と促した。

 市の財政負担について、松井市長は先の会見で、市所有の被爆建物は市の財源と国の補助で保存してきたとし、現段階で否定的な見解を示していた。

 県は来年2月に最終的な方向性を定める方針。湯崎知事は「県民の意見や県財政の影響などを総合的に考慮し進めていく」と述べた。検討作業を凍結する可能性については「昨年の大阪府北部地震でブロック塀が倒れ、安全対策を施さなければならない」と否定的な考えを示した。(村田拓也)

(2019年12月25日朝刊掲載)

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