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「黒い雨」訴訟結審 広島地裁 判決は7月29日

 原爆投下後に放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びたのに、被爆者健康手帳の交付申請を却下したのは違法などとして、広島市や広島県安芸太田町などの70~90代の男女85人(うち8人は死亡)が、市と県に却下処分の取り消しや手帳の交付を求めた訴訟の口頭弁論が20日、広島地裁であり、結審した。判決は7月29日の予定。黒い雨を巡る全国初の訴訟で、国が定めた援護対象区域の妥当性について司法が初めて判断する。

 この日は高野正明原告団長(81)=佐伯区=が意見を陳述。「私たちの被爆と健康悪化の苦難を理解してもらい、被爆75年を迎える広島での被爆者裁判にふさわしい判決を」と求めた。

 国は被爆者援護法に基づき、爆心地から市北西部にかけてを「大雨地域」として援護対象区域に設定。この区域内で黒い雨を浴びた住民に無料で健康診断をしている。がんや白内障など国が定める11疾病と診断されれば、手帳を交付し、医療費が原則無料になるなどの援護策が受けられる。

 原告はいずれも当時、大雨地域周辺の「小雨地域」かその外側に住んでいたため援護の対象外だが、裁判では「黒い雨を浴びた」などと主張。黒い雨は大雨地域の約6倍の範囲で降ったと推定した市の調査報告書などを挙げ、交付申請の却下処分を取り消し、手帳を交付すべきだとしている。国側は市の調査は正確性に疑義があるとし「大雨地域の指定は不合理とはいえない」などと反論している。

 弁論後にあった原告の報告集会で竹森雅泰弁護士は判決が半年先に設定された点に関し「個々の被爆状態を一つ一つ検討して判断しようということ。前向きに捉えて判決を待とう」と呼び掛けた。(松本輝)

(2020年1月21日朝刊掲載)

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