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父の被爆体験 日米で映画に 米在住の美甘さん 今夏の公開目指す

 広島市東区出身で米サンディエゴ在住の美甘(みかも)章子さん(58)が被爆75年に合わせ、自身の著書「8時15分 ヒロシマで生きぬいて許す心」を基にしたドキュメンタリー映画を制作している。美甘さんの父進示さん(93)=東区=の被爆体験や戦後の苦難を克明に描く。「広島の原爆被害を知らない世界の人に伝えたい」と、今夏に日米での公開を目指している。

 日米で制作する映画は60分程度。進示さんが爆心地から約1・2キロで被爆し、右半身に大やけどを負った体験のほか、ともに被爆した父福一さんとの絆を伝える。「悪いのは原爆を落とした米国ではなく戦争」。繰り返していた進示さんの言葉を通じ、人を許すことの大切さなどを訴える。美甘さんや進示さん役の俳優の回想を軸に、記録映像や写真、進示さん本人の証言映像を交えて構成する。

 美甘さんは広島大教育学部卒業後に渡米し、現在は臨床心理医。2013年、英語版の原書(19年改訂)を執筆し、14年に日本語版を出した。これまでに計5カ国語で出版され、今春にはドイツで刊行する。

 「ヒロシマの声を世界に発信するのは、私の人生の使命だ。映像に残すことでより広く、次代まで伝えることができる」と美甘さん。監督を務めるJ・R・ヘッフェルフィンガーさん(米ニューヨーク)は「逆境に耐える人間の魂の力、希望と平和のメッセージを伝えたい」と力を込める。

 今月16日には、平和記念公園(中区)の原爆慰霊碑前などでロケ撮影した。美甘さんは「平和には国や人種を超えて手を取り合うことが大事だと伝えられる映画にしたい」と話している。(明知隼二)

(2020年1月22日朝刊掲載)

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