×

ニュース

被服支廠の価値 再確認 中区 保全目指し講演会

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)の解体に反対する市民団体「旧被服支廠の保全を願う懇談会」が2日、中区の原爆資料館で講演会を開いた。広島大の三浦正幸名誉教授(日本建築史)が歴史的価値などの観点から解説し、約150人が保全への思いを強くした。

 三浦名誉教授は、1913年完成の旧被服支廠について「国内に現存する鉄筋コンクリート造の建築物として最古級」と指摘。瓦をふくため、コンクリートを斜めの板状に設置した技術は世界でも最先端だったとして「20世紀以降に日本の建築の中心となった技術。国の重要文化財に指定するべきだ」と強調した。

 「2棟解体、1棟の外観保存」とする県の安全対策の原案について「多くの負傷者が亡くなった場所だと実感するには、全棟の保存が必要」と反論。1棟の耐震化に33億円かかるとの試算に「税金だけを使うのではなく、世界中から寄付を集めるべきだ」と求めた。

 県は原案で2020年度としてきた解体の着手を先送りする方針を固めている。同会の中西巌代表(90)は「全棟保全が決まるまで訴え続けたい」と話した。(桑田勇樹)

(2020年2月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ