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被爆遺品 精巧レプリカ 8時15分指す腕時計や夏服… 原爆資料館で企画展

 被爆資料の実物とレプリカ(複製)を並べて展示する企画展が、原爆資料館東館(広島市中区)1階で開かれている。国内外での原爆展などで活用している精巧なレプリカの技術や意義を知ってもらうため、同館が初めて企画した。

 8時15分を指す腕時計、学徒が履いていた布靴など5点を、それぞれのレプリカと並べて展示。時計の文字盤の傷み、靴の汚れや破れまで緻密に再現している。来館者にじっくり見てもらうため、あえてどちらが本物かは示していない。

 県立広島第一高等女学校(現皆実高)1年だった大下靖子さん=当時(13)=の遺品の夏服については、レプリカの制作過程を写真パネルで解説する。焼け焦げた質感や色合いを再現するのに「炭の粉を溶いて使うとうまくいった。この服が焼け焦げたのだと思い知らされた」など、制作した職人の感想も紹介している。

 神奈川県藤沢市の大学4年、千葉穂乃香さん(22)は「そっくりで見分けられない。一度きれいに作ってから崩すとは知らなかった」と見入っていた。

 資料館は1996年度からレプリカの製造を開始。焼けた三輪車など、被爆の実態を強く訴える一方、長期の展示や持ち運びが難しい資料を中心に、これまでに32点を作っている。同館は「レプリカが資料の保存と展示の両立に重要な役割を果たしていると知ってほしい」としている。5月までで無料。(明知隼二)

(2020年2月17日朝刊掲載)

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