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北朝鮮の核開発非難 NPT準備委 総括発表し閉幕 「非人道性」再確認

 2015年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向けてスイス・ジュネーブで開かれた第2回準備委員会は3日、2月に核実験を強行した北朝鮮への非難や、核兵器の非人道性を再確認したことなどを盛り込んだ総括文書をコルネル・フェルッツァ議長が発表し、閉幕した。 (ジュネーブ発 田中美千子)

 今回の準備委では、南アフリカが「いかなる状況下でも核兵器が再び使用されないことが人類生存に寄与する」とする共同声明を発表。70カ国以上が賛同した。

 議長総括は「核使用による破壊的な人道的影響への深い憂慮を再確認した」と言及。唯一の被爆国である日本は加わらず、非人道性に焦点を当てて核軍縮・廃絶を迫る動きに水を差す格好となった。

 北朝鮮の核開発に対しては「NPT体制への挑戦で、深刻な懸念がある」と指摘。6カ国協議再開など平和的解決に向けた努力を続けることで一致した。

 10年の前回再検討会議では、中東の非核化に関する国際会議の12年開催で合意したが、実現していない。この問題をめぐってアラブ諸国が抗議を重ね、エジプトは途中から協議をボイコットした。議長総括は「13年末までのできるだけ早期に」開催することへの協力を「多くの加盟国が表明した」とした。

 広島市の松井一実市長は4月22日から4日間、現地を訪問。公式行事で演説し、核兵器廃絶を訴えた。

 第3回準備委は来年4月28日から2週間、米ニューヨークで開かれる。

声明不賛同 姿勢問われた日本

 北朝鮮が弾道ミサイル発射の動きを見せるなど挑発行為を繰り返し、国際社会の緊張が高まる中で開かれたNPT再検討会議の第2回準備委員会。最も注目を集めたのは、日本が賛同しなかった「核兵器の人道的影響に関する共同声明」だった。

 今回の準備委で、核兵器保有国は核軍縮への踏み込んだ動きを見せなかった。中東非核化の道のりの険しさ、核不拡散体制の危うさも浮き彫りになった。そんな現状を打破しようと、核兵器を持たない国々がたどり着いたのが共同声明だった。

 同じ趣旨の声明は昨年の第1回準備委、国連総会に次ぎ3回目。賛同国を16、35と増やし、今回は70カ国以上が名を連ねた。核軍縮に向けた新たな潮流の定着を印象付けた。

 日本はいずれも賛同を求められたが、応じなかった。前回は「核を非合法化する努力」を促す部分が「わが国の安全保障政策の考え方と必ずしも合致しない」と説明した。声明を主導するスイスなどの国々は今回、「非合法化」の表現を削除。被爆国との連携に期待を高めた。

 だが日本政府は東アジア情勢が緊迫する中、米国の差し出す「核の傘」への影響を懸念し、賛同を見送った。裏を返せば、核兵器の「役割」を公然と認めたことになる。

 賛同国からは「核の傘の下に居座る国こそ、周辺の国を不安にさせ、核を持ちたがる理由を与えている」との指摘もあった。

 準備委の演説で、日本政府は「次回は賛同の可能性を真剣に検討する」と宣言した。被爆国として真の非核外交を展開するために、核の傘に頼らない、あるいは依存を減らしていく安全保障の追求を本気で始める時だ。(ジュネーブ田中美千子)

(2013年5月4日朝刊掲載)

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