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原爆症 25日最高裁判決 病気の経過観察 「要医療性」どう判断

他の認定訴訟に影響も

 広島、長崎への原爆投下で被爆した人が原爆症と認定するよう国に求めた3件の訴訟の上告審判決が25日、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)で言い渡される。いずれも病気の経過観察という状態が、原爆症認定の要件となる「要医療性」に当てはまるかどうかが争点。最高裁は要医療性を巡る統一判断を示すとみられ、他の地裁や高裁での同種の訴訟にも影響する可能性がある。(河野揚)

 原告は、広島で被爆した広島市安佐南区の内藤淑子さん(75)と、いずれも長崎で被爆した名古屋市緑区の高井ツタエさん(84)、佐賀県の80代女性の計3人。

 患っている白内障や慢性甲状腺炎を医師が経過観察と診断したことなどから、国は原爆症認定の申請を却下。3人は2011~16年、それぞれ却下処分の取り消しを求めて提訴した。

 内藤さんは広島高裁、高井さんは名古屋高裁で、経過観察も治療に不可欠な行為などとして要医療性を認められた。これを不服とする国が上告した。

 一方、佐賀県の女性については福岡高裁が定期検査などにとどまる経過観察の要医療性を認めなかった。

 1月21日の上告審弁論で、国は、原爆症認定は手厚い援護が必要な人が対象とし「経過観察は治療が必要な状態になく、要医療性の要件を満たさない」と主張。被爆者側の弁護団は「医療現場では、経過観察も重要な医療行為だ」「国は要医療性の解釈を狭めて、被爆者を切り捨てている」などと訴えた。

 原爆症認定を巡っては03年4月以降の集団訴訟で被爆者側の勝訴が相次ぎ、国が一時は訴訟をしない方針を示した。だが、国が13年12月に定めた新たな審査基準でも認定申請の却下が相次ぎ、最高裁の3人のほか、高裁で18人、地裁で1人が係争中だ。

 最高裁が原爆症認定訴訟で判決を下すのは、長崎市の女性が国に勝訴した00年の「長崎原爆松谷訴訟」以来2例目になる。今回の判決で被爆者側が全面的に勝訴すれば、国は審査基準の見直しを迫られる形にもなる。

≪原爆症認定を巡る主な動き≫

2000年7月 最高裁が「長崎原爆松谷訴訟」で原告の女性を原爆症と認める
  01年5月 厚生労働省が放射線による発症リスクを数値化した「原因確率」による
        認定基準を決定
  03年4月 原爆症認定集団訴訟が始まる
  08年3月 厚労省が認定基準を緩和。5疾病を一定条件で積極認定
  09年8月 集団訴訟の終結へ政府と日本被団協が確認書を締結
 11年12月 集団訴訟がいったん終結
 13年12月 厚労省が積極認定する7疾病の「新しい審査方針」を決定。その後も認
        定却下処分を取り消すよう国に求める訴訟が相次ぐ
  20年1月 「要医療性」で争う被爆者3人の訴訟の上告審弁論が最高裁で開かれた

原爆症認定制度
 原爆による放射線が原因で病気やけがを患っていると国が認めた被爆者に、月14万1360円の医療特別手当を支給する。認定されるには、原爆放射線と病気の関連性である「放射性起因性」と、治療が必要な状態である「要医療性」の二つの要件を満たさなければならない。

(2020年2月24日朝刊掲載)

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