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被爆者や識者反発 広島 原爆展 外務省が内容変更を要求

 日本被団協が4月下旬開幕の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて米ニューヨークの国連本部で開く原爆展について、外務省が原発事故の被害を説明する展示パネルの内容変更を求めていることが3日、分かった。広島県内の被爆者や指揮者からは、批判や疑問の声が相次いだ。

 日本被団協の代表団の一員として現地入りする広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(77)は「福島第1原発事故は実際に起きたことで、世界に知らせるべき事実だ」と反論した。核兵器に限らず、原発もなくしていくため、核が人間にもたらす被害を重視する被爆者の立場を訴えた。

 もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(75)は、原爆展開催の意義は、国連に集まった核兵器の保有国と非保有国の代表たちに、被爆者の「核をなくそう」という思いを伝えることにあると説いた。「原発事故も核の問題と考える被爆者の思いを、外務省は理解していない」と語気を強めた。

 日本被団協によると、国連側とは昨年から協議を重ね、展示する全てのパネルの内容について了承を得た。広島市は展示する被爆資料の貸し出しで協力している。原爆資料館(中区)は「大切なのは原爆展が開かれ、各国代表の目に触れることだ。外務省の後援の有無に関係なく、資料は提供する」とした。

 広島市立大広島平和研究所の河上暁弘准教授(憲法学)は、今回の外務省の対応を疑問視する。「展示を中止させるまでしなくても、後援の取り下げ自体が表現への圧力やメッセージになりうる。外務省はその点をわきまえるべきだ」と注文した。(明知隼二、新山京子)

(2020年3月4日朝刊掲載)

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